沖縄県那覇市の人気店「おでん東大」の女性店主を殺害した疑いで、長女夫妻が逮捕された。沖縄タイムスなどの報道によると、いずれも容疑を否認しているとされる。2人は収入に見合わない生活をしていたといい、県警は、資産が数千万円あるという店主の金銭を目当てに自殺を装ったとみて調べているという。
財産目的で親を死亡させた場合、子どもは相続できるのか?田中真由美弁護士に聞いた。
●「相続欠格」にあたるケースとは
――親を殺した場合は、その親の遺産を相続できるのでしょうか?
相続に関して不正な利益を得ようとして、不正な行為をなしまたはしようとした者については法律上当然に相続人の資格が奪われます。これを「相続欠格」といい、民法891条に規定されています。
したがって、この長女が母親を殺害したことが立証され、刑に処せられた場合は相続することができません。
民法891条1号は「故意に…死亡するに至らせ、又は至らせようとした」と規定しています。殺人の既遂だけでなく、未遂や予備も含まれますが、故意犯であることが必要で、過失致死や傷害致死などは対象外になります。
――「相続欠格」に当たる場合は、殺人以外にもあるのでしょうか?
民法の定める相続欠格は、民法891条各号に定められた5つです。大きく分けると、被相続人などに対する生命侵害に関するものと、被相続人の遺言の妨害に関するものの2つです。
①故意に被相続人または先順位もしくは同順位の相続人を死亡させまたは死亡させようとして、刑に処せられた者 ②被相続人が殺害されたことを知っていながら告訴・告発しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、または殺害者が自己の配偶者もしくは直系血族であったときは除外される。 ③詐欺・強迫によって被相続人の遺言の作成・取消・変更を妨げた者 ④詐欺・強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせ、またはその取消・変更をさせた者 ⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者
●生前に名義変更された不動産はそのまま?
――被害者のマンションが長女に名義変更されていたと報道されています。これも刑が確定すれば、取り消しとなるのでしょうか?
母の所有不動産が生前に長女に名義変更されていた場合、生前贈与の可能性があります。生前贈与は、相続とは異なりますので、相続欠格に該当したとしても影響はありません。
●孫がいれば、相続する可能性も
――店主に配偶者はおらず、子どもはこの長女だけで、長女夫妻には子ども(被害者にとっては孫)が2人いると報じられています。孫が相続することになるのでしょうか?
子どもがいなかった場合は、親の両親、きょうだいなど次順位の相続人が相続します。報じられている内容通りの家族構成ならば、長女が相続欠格となった場合はその子どもが相続します(代襲相続)。