自宅購入のデメリットの1つは、別居あるいは離婚する際に、問題が噴出すること。弁護士ドットコムには「配偶者名義の家を出ていかなければならないのか?」という相談が複数寄せられています。
ある女性は、夫名義の家に子どもと住んでいますが、夫が浮気をして家を出て行きました。夫は離婚したいがために「家は売却する」と脅してきたと言い、「住む家がなくなると生活していけない」と困り果てています。
別居や離婚に際し、理由がどうあれ、名義が配偶者のものであれば、「出て行け」という言葉に従うしかないのでしょうか。また、そもそも離婚に応じるべきなのでしょうか。上将倫弁護士に聞きました。
●離婚成立前は「扶養義務や協力義務がある」
「自宅に残された妻子が、夫名義の家に住み続けられるかどうかについては、離婚が成立するかどうか、成立するとすればどのような条件になるかに、密接に関わってきます。離婚が成立していない間は、夫には妻に対する扶養義務や夫婦間の協力義務がありますので、簡単には家を出て行けとは言えないでしょう」
相手が「自宅を売却するから出て行って」と言ってきた時には、どうしたら良いのでしょうか。
「理論上は、夫が妻子の居住する自宅を売却することは不可能ではありません。しかし居住している妻子が同意しない中で、売却を行うのは相当に困難です。また、婚姻中に形成されたお金で建てた自宅の場合には、実質的な夫婦共有財産となります。
そこで、自宅は財産分与の対象となることを理由に、処分禁止の仮処分を申し立てるなどの対抗策をとることができる場合もあります。
これに対して、すでに離婚が成立して財産分与の問題も解決し、自宅が夫のものであることが確定している場合、何らかの特別な合意がない限りは、妻が自宅を出て行くのはやむを得ないでしょう」
●「安易に離婚に応じないように注意」
そもそも有責配偶者からの離婚請求については、認められるものなのでしょうか。
「不貞によって離婚原因を作った有責配偶者からの離婚請求は、別居が相当長期化し、未成熟の子(経済的に自立していない子ども)がいない状況で、離婚をしても相手方が精神的、経済的、社会的に過酷な状況におかれないなどの事情が必要となります。
一概には言えませんが、別居期間が10年近くに及び、子どもが成人して独立しており、妻の離婚後の生活についても成り立つ目処が立っていなければ、裁判をしても夫からの離婚請求はなかなか認められないでしょう」
つまり、相手側が一方的に都合のよい申し立てをしてきた場合には、すぐに応じないほうが良いのですね。
「そうです。安易に離婚に応じないように注意する必要があります。離婚に応じる場合であっても、財産分与として自宅の名義を変えるように求めることもありえますし、慰謝料はきちんと支払ってもらう必要があります。今後、ご自身の生活が成り立つかどうか、慎重に考えて意思決定をした方がいいです」