「●歳まで独身だったら結婚しようね」。少女漫画に出てきそうなセリフですが、現実にもそんな約束をしている男女がいるようです。弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも、冗談で「35歳まで独身だったら結婚してあげる」と言った26歳の女性から、もし破ったら「結婚詐欺にあたりますか」という相談が寄せられました。
相手はふた回り年上の男性。「独身だったら」発言をする前から、交際中はプレゼントをたくさんもらったそうです。しかし別れを告げると「結婚詐欺」と言われ、困っているそうです。
今回のような「●歳まで独身だったら結婚しようね」という口約束は、婚約と同等の意味があるのでしょうか。また、これを守らなかった場合、結婚詐欺になってしまうのでしょうか。また、「●歳まで独身だったら結婚しようね」が、婚約になる場合もあるのでしょうか。渡邊幹仁弁護士に聞きました。
●守らなかったら「結婚詐欺」になってしまう?
「結論としては、『結婚詐欺』にはなりません」
ーーなぜでしょうか?
「『詐欺』とは、要するに人を騙して『財物』または『財産上の利益』を得ることを言います。
いわゆる結婚詐欺と言われるものの典型は、『近い将来、私たちは結婚するのだから(そうすればお財布も一緒になるのだから)』などと言って、結婚する気もないのに、生活費や事業資金の援助と称してお金を出させる、という手口です。
本件では、このように結婚をチラつかせて騙してお金を出させたり、あるいは結婚をチラつかせて借金を免れたりしたわけではないので、結婚詐欺にはあたりません」
ーーでは、「●歳まで独身だったら結婚しようね」という約束を守らなかったことは、「婚約破棄」にあたるのでしょうか
「本件では、結論として『婚約』が成立していたとは言えず、婚約破棄にはあたらないと考えられます。
『婚約』が成立するには、婚約指輪や結納が必要なわけではありませんが、将来結婚をするという具体的で誠実な合意が必要です。
本件のように『●歳まで独身だったら結婚しよう』と条件をつけることは、別の相手と結婚する可能性も含んでいるとも言え、結婚に向けた具体的で誠実な合意があったとは言えません。
また、そもそも『●歳まで独身だったら結婚しよう』という約束は、条件付きの婚姻の約束と見ることもできます。婚姻のような身分行為に条件をつけることは公序良俗に反する等の理由から認められないとされています。したがって、そもそも約束自体が無効だと考えられます」