愛を誓い合って結婚した夫婦にも、離婚の危機は訪れるものだ。夫婦が不仲になる原因はさまざまだが、代表的なものはパートナーの浮気だろう。民法では、「配偶者に不貞な行為があった」場合において、夫婦の一方は「離婚の提起をすることができる」と定められている。では、夫婦の一方が愛を確認する行為を怠った場合はどうなるのだろうか。
女性向けの匿名掲示板サービス「GIRL’S TALK」には、セックスレスが原因で夫婦間の関係がうまくいっていないという相談が寄せられている。相談者は27歳の女性だ。「セックスレスで何回も話し合い、1週間に1回は絶対すると約束してくれたのに、1ヶ月なにもしてない」と悩みを打ち明ける。夫婦は結婚1年目で、女性は「赤ちゃんを作りたいし、約束すると言ってくれたのに」と不満を漏らす。
女性の夫は、行為の頻度が減った理由を、仕事が忙しいからと説明しているそうだが、女性は「夫婦の中でセックスがなくなったら絶対上手くいかなくなる」と主張している。しかも、「もう最近旦那が、わけがわからない。頭がおかしくなりそう」と切実だ。はたして、セックスレスは「離婚理由」になるのだろうか。夫婦問題に詳しい篠田恵里香弁護士に話を聞いた。
●夫婦の性生活は「婚姻関係の基本となるべき重要事項」
「夫婦間の『セックスレス』は十分、離婚理由となりえます」
このように篠田弁護士はズバッと言う。その理由について、次のように説明する。
「法律上、夫婦の性生活は、婚姻関係の基本となるべき重要事項であると昭和時代から考えられています。性交渉は、円満な夫婦生活を続けるためには、かけがえのないものということです。
したがってセックスレスは、直接的に婚姻関係に亀裂を生じさせる事由といえます。裁判上も、夫婦間の性交拒否は、離婚原因である『婚姻を継続しがたい重大な事由(民法770条1項5号)』を構成する重要な要素と考えられています」
では、離婚につながるような「セックスレス」とは、どれくらいの程度なのだろうか。
「性交渉の不存在が『裁判上の離婚原因』となるためには、夫婦関係が破綻の程度に至っていると判断されることが必要ですから、1回や2回程度、性交渉を拒否しただけでは足りないですね。
セックスレスの期間や態様がどれだけのものであったか、どれだけ夫婦間の信頼関係を破壊するような事情があるか等、諸事情の総合考慮によりますが、セックスレスが長期に渡れば、十分離婚原因になると考えられます。
裁判例としては、『夫が妻との性交渉を1年4か月も拒否し、ポルノビデオを見て自慰行為を繰り返したあげくに別居した』という事案につき、裁判上の離婚原因として認定したものがあります」
このような裁判例からすると、「GIRL’S TALK」の相談者のような「1ヶ月なにもしてない」という状態では、離婚を考えるのはまだ早すぎるのかもしれない。ただ、夫婦の双方が同意しているのでないかぎり、セックスレスが夫婦生活に悪影響を及ぼすのは明らかといえるのだろう。