娘に付けた名前が夫の不倫相手と同じだった――。弁護士ドットコムにはそんなショックな相談が寄せられています。
1歳になる娘を育てているという女性。娘が生まれた直後に夫の不倫が発覚しました。それだけでもショックなのに、その不倫相手の名前が「ユキエ」(仮名)で、愛娘の名前「ユキ」とほぼ同じであることもわかりました。夫は、不倫相手のことも娘のことも「ユキちゃん」と呼んでいたそうです。
ほかにも、ネット上には「夫が名付けた娘の名前が、夫の元カノでした。娘の名前を呼ぶのも嫌だし、夫への気持ちも冷めました」「生まれたばかりの娘に元カノの名前をつけたのが嫁にバレました。嫁がうつ状態になってしまいました」といったエピソードを見かけます。
年末年始に夫の地元に帰省した際に発覚することもあるようです。こうした悩みの末に、娘の改名をしたいという妻の願いは実現可能なのでしょうか。
●改名に必要な「正当な事由」とは?
弁護士ドットコムに相談を寄せた女性。夫の不倫は妊娠する前からで、娘の名前を不倫相手のことを思って名づけたか、あるいは家庭で不倫相手の名前を誤って呼んだとしても、怪しまれないようにつけたのではと考えています。
しかし、不倫がわかってからは娘を「ユキちゃん」と呼べずに辛い思いをしているといいます。一度、うっかり夫が「ユキちゃん」と言っているのを聞いたときには感情が抑えきれなかったそうです。女性は娘の名前を改名したいと考えています。
改名するには、どのようなことが必要なのでしょうか。改名については、戸籍法107条2で次のように規定されています。
「正当な事由によって名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない」
つまり、改名の理由を家庭裁判所が「正当な事由」であると判断すれば、改名が可能です。裁判所の公式ホームページには、こう説明されています。
「正当な事由とは、名の変更をしないとその人の社会生活において支障を来す場合をいい、単なる個人的趣味、感情、信仰上の希望等のみでは足りないとされています」
また、裁判所が公開している「名の変更許可申立書」(15歳未満の場合)にある申立ての理由欄には、「奇妙な名前である」ことや「同姓同名者がいて不便である」といった理由が挙げられており、裁判所がどのようなことを「正当な事由」ととらえているかがわかります。
裁判所が公開している「名の変更許可申立書」にある申立ての理由欄(https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/file2/2019_nanohenkou_m.pdf)
残念ながら、「単なる感情のみ」では認められない可能性があるようです。
一方で、父が独断で命名してしまい、のちに母といさかいとなったケースで、子どもが乳児で社会的な影響が少ないことや、父母のいさかいが子どもの将来にとって望ましくないことなどを理由に裁判所が改名を認めた判決などもあります(東京高裁昭和51年12月8日)。
また、性同一性障害と認められた人が、「精神的苦痛」などを理由に自分の性に合った名前に改名するケースもあります。
不倫相手やかつての彼女の名前をつけられてしまった娘の改名はどこまで実現可能か、判断が難しいところです。そもそも、トラブルを招かないように子どもの名づけをすることが望まれます。