不倫騒動で話題になっている元AKB48の篠田麻里子さん。夫婦喧嘩の音声が流出し、インターネット上で広まっている。「私が全部悪い」「死んだら許してね」などと泣きながら訴える篠田さんの声や、子どもの名前を連呼する声も含まれている。
そもそも、夫婦のプライベートな会話を晒すことに法的問題はないのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。
●プライバシー権侵害や名誉毀損行為に該当し得る
濵門弁護士は、夫婦喧嘩の音声を公にする行為は「プライバシー権侵害や名誉毀損行為に該当し得る」と指摘する。
「プライバシー権とは、私生活上の情報をみだりに公開されない権利とされ、憲法13条で保障される基本的人権であると解されています。
今回の件においては、篠田さん自身が第三者と不貞行為に及んでいるという事実を公開されることを望むはずがありません。篠田さんが著名人であるとしても、プライバシー権の侵害として不法行為が成立し得るのではないかと考えます。この場合、篠田さんは損害賠償請求が可能となります。
名誉権もプライバシー権と同様に憲法13条によって保障されている基本的人権と解されています。名誉毀損とは、それが真実か虚偽であるかにかかわらず、ある具体的事実を不特定多数の人が認識できる状態で示すことによって、ある人の社会的な評価を低下させることをいいます。
名誉毀損行為について民法上の不法行為が成立する場合には、損害賠償責任を負います。さらに、名誉毀損をした者に対して、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償にかえて、または損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができるという原状回復が認められています」
●名誉毀損は刑事罰が科される可能性も
名誉毀損については、刑事罰が科される可能性があることにも注意しなければならない。刑法には、名誉毀損について、次のような規定がある。
【刑法230条1項】 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。
ここにいう「公然」とは「不特定多数の人が認識できる状態のこと」を指し、事実の摘示とは「具体的な事実を示すこと」を意味すると濵門弁護士は説明する。これらが備わった状況で他人の名誉を毀損してしまう(=社会的な評価を低下させるおそれがある)と、名誉毀損罪が成立することになるという。
「ただし、名誉毀損罪が構成されるケースであっても、公共性があり、その目的がもっぱら公益を図ることにあったと認められ、摘示された事実が真実であると確認できた場合には、違法性阻却事由に該当するため、処罰の対象にはなりません (刑法230条の2の1項)。
この点、本件における音声の公開は、まったく目的の公益性が認められません。また、篠田さんが第三者と不貞行為をおこなった事実にもまったく公共性がありません。篠田さんサイドとしては、告訴を検討されてもいいのかもしれません」