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「本当に離婚できたんだ」裁判所で和解が成立、溢れてきた涙
ついに和解成立( nonpii / PIXTA )

「本当に離婚できたんだ」裁判所で和解が成立、溢れてきた涙

離婚に至る経緯は人それぞれですが、きちんと話し合って円満に成立、とはなかなかいかないもの。配偶者の浮気や不倫が原因なら慰謝料が発生し、子どもがいるなら親権の問題、また養育費についての取り決めなども避けられません。

話し合いで離婚できなければ、家庭裁判所での調停や裁判まで進むことも。実際に離婚訴訟を起こすことになった女性の体験をお伝えします。(ライター/内田 聡子)

●離婚訴訟を起こす準備

2回目の調停が不成立になり、すぐに離婚訴訟を起こすことにしました。私の年収なら法テラスの援助制度を利用することができるとわかり、申し込みと並行して裁判所に提出する訴状についても弁護士が考えてくれました。

援助制度の申し込みは専用の用紙に記入するだけで、法テラスとのやり取りも弁護士が代わりに行ってくれます。

これまでずっと相談に乗ってくれていた弁護士に改めて代理人を依頼し、受任してもらったときは、少しだけ肩の荷が下りた気がしました。

弁護士費用のほかに、訴状を提出する際の収入印紙代などもすべて対象になるので、訴訟を起こすために私が用意した現金はありません。

訴状については、調停を通じてお互いに離婚の意思があることはわかっており、問題は財産分与のみ。こちらからはあえて請求せず、息子の親権と養育費だけを求める内容にしました。

財産分与を請求しないのは、そもそもプラスになる預貯金などの資産がないからです。訴状は、裁判所に提出する分と被告となる夫に送られるものと2通作成しました。

生まれてはじめての訴訟で緊張しましたが、一番気がかりだった弁護士費用は法テラスの援助制度が使えたおかげで23万円となり、分割で支払っていけるので本当に助かりました。

●訴訟中でも続く面会交流

話し合いでお互いに納得する道を探す調停と違い、訴訟になると法律にもとづいて離婚そのものや財産分与について判断が下されます。

訴状にある原告・被告という文字を目にすると、改めて夫と対立する関係であることが実感されて気が重かったのですが、それ以上に苦痛なのが面会交流でした。調停で毎週末行うと決まっていたので、週の半ばになると夫から週末の予定についてLINEでメッセージが届きます。

訴状が届いたはずでも夫は変わらず息子との面会を求め、また息子も会いたがったので、嫌悪感を抑えながら夫のアパートまで連れていく日々でした。

未払いの不安があった婚姻費用を夫は滞りなく振り込んでおり、また息子も楽しそうに帰宅するのを見れば、夫の息子への愛情だけは信じていたかったです。

私自身、訴訟中ならなおさらほかの面で問題を起こすことは避けたく、息子のためと思いながら毎回しっかりと着替えなどを準備して面会交流を続けていました。

●本人訴訟を選択した夫からの反訴

裁判所に訴状を提出してから1カ月後、最初の期日が決まりました。訴訟に関する書類はすべて弁護士事務所に届くので、夫からの答弁書なども我が家で目にすることがなく、助かりました。

夫は本人訴訟を選んだようで、代理人はおらず答弁書は手書きになっていました。

調停と変わらず「借金を全部払え」と主張する夫の文章にはうんざりしましたが、離婚することには同意しており、親権を私が持つことや養育費の3万円についても反論はなく、その点はほっとしました。

なお慰謝料については、裁判で不貞が認められるだけの証拠を揃えることができなかったため、弁護士との協議の上で、請求することは諦めました。

私は弁護士に代理人を依頼しているため、裁判に出廷する必要はありませんが、本人訴訟である夫たちは毎回出廷して自分で主張を展開することになります。第1回目の期日は訴状の確認だけで終わりましたが、半月ほどして弁護士から反訴があったと連絡がありました。

反訴は、被告となった側が逆に原告を訴え返すことで、手書きの半訴状には財産分与を求めること、面会交流で毎回1,000円のお金を私が払うこと、払わないのであれば養育費から引くこと、この離婚は計画的であり隠し財産があるはずだから提示することなど、相変わらず自分たちの都合しか考えていない内容でした。

「かなり腹が立つかもしれませんが」と弁護士からは読む前に言われましたが、私にとっては調停からずっと見せられている悪意であり、腹が立つより「こんな主張ができるということは、裁判になってもまだ弁護士に相談していないのだな」という実感が強くありました。

客観的に見ても非常識と思われる内容について、裁判官がどう判断するかが気になりました。

●裁判官の言葉「調停と裁判は違う」

裁判では、裁判官と書記官が毎回法廷に入ります。今回は40代くらいの女性の裁判官で、大きな声ではっきりとものを言うのが特徴的だと弁護士から聞いていました。

2回目の期日で、「自分が抱える銀行のローンは妻が支払うべき」という夫の主張について、「自分が名義の負債については、それぞれが払う」と却下したそうです。

「妻は調停で借金を半分払うと言った」と夫は食い下がったそうですが、「調停と裁判は違います。それぞれが払うという判決になります」ときっぱり口にした、と弁護士から聞いたときは、心の底から溜飲が下がる思いでした。

半訴状にあった「面会交流で妻が食費として1,000円を支払う」や「隠し財産があるはずだから提示するべき」という主張については、それが正当であるとする根拠を示すよう夫に求めたそうです。

また、財産分与を求めた側として正確な負債の額を提示するよう指示がありました。弁護士の話を聞いていると、夫は「主張すれば裁判所のほうで調べてくれる」と思いこんでいるようで、証明する義務が自分たちにあると知って驚いたのではないでしょうか。

結局、次の期日で夫から新しい証拠が提出されることはなく、調停では300万と言っていた借金も私の想像通り100万円となっていました。

3回目の期日でも、夫は「借金を自分が払うのは納得できない」と言っていたそうで、再度「生活費のための借金なら片方にすべて払わせるのは無理であり、それぞれが支払うという判決になります」と裁判官から説明があったそうです。

私たちが提出した準備書面では、面会交流を求める夫が食費を負担するのは当然であること、養育費から食費を引くのは非常識であること、また財産分与は本来プラスの財産を分ける制度であることから夫の生命保険や退職金が対象になることを書いていました。

それを受けて、次回は夫の生命保険について別居時点での返戻金、同じく退職金の額を書面で提出することが決まります。

●弁護士から和解についての提案

夫側に不利な状況であることがわかりましたが、弁護士から「こちらから被告に和解案を出しましょうか」という話がありました。

裁判官に和解を提案する気が見られず、このままでは判決まで進むこと、そうなるとそれぞれが所有する車の別居時点での価値などを提示しなければならず、まだ時間がかかることを説明されました。

それを聞いて、「判決になれば夫側は必ず告訴して離婚を引き伸ばすだろう」と私は感じました。

弁護士が考えた和解案は「財産分与はなし、親権は原告、養育費は子供が20歳になるまで月3万円」というシンプルなもので、こちらが要求していたプラスの財産は手に入らないですが、計算では100万円を超えるような金額ではなく、それよりも一刻も早く離婚を成立させるのが正解だと考えました。

夫にとっても、プラスになる預貯金がないうえに自分が払う一方になる判決は想像がつくはずで、決して悪い案ではないはずです。弁護士に「その提案でお願いします」と頭を下げ、夫に伝えてもらいました。

次の期日まで1カ月ありましたが、夫から返事があったのはその一週間前、和解案はおおむね賛成でしたが、養育費について「20歳ではなく18歳か高校卒業までにしてほしい」と要求があったそうです。

息子が20歳になるときに夫は60歳を超えており、経済的な負担を考えれば譲歩は可能と考えました。養育費の支払いは息子が高校を卒業する年の3月までと変更し、そのほかはこちらの和解案通りで弁護士より裁判所に届けられました。

●和解離婚の成立

最後の期日は原告である私にも出廷が求められ、その日初めて、法廷に足を踏み入れました。

小さな部屋でしたがテレビで見る通りにテーブルや椅子などが置かれており、弁護士に導かれて原告の席に座ったとき、やっと「これが裁判なのか」と実感が湧いてきました。

調停で調書を読み上げるときになってやめたと言い出した夫が頭から離れず、「今回もするかもしれない」という不安が大きくて、本当に和解で終われるのかどうか不安のほうが大きかったです。

初めて目にする裁判官と書記官と、被告の席に夫が座るのを見て、緊張ばかり募ります。 裁判官は改めて弁護士がまとめた和解案について読み上げ、私と夫に「これで本当に良いですか」と顔を向けました。

私も夫も「はい」と答え、「それでは、離婚成立とします」と裁判官が大きな声で宣言しました。

最後まで夫から「やっぱりやめます」という言葉は出ず、書記官が「調書は2日後くらいに届きますので」と弁護士に話す声を聞きながら、しばらく動けずにいました。

夫側の傍聴席には義兄が座っていましたが、裁判官が閉廷を告げて部屋を出るとふたりもすぐに姿を消し、弁護士が「よかったですね!」と笑顔を向けてくれたときにようやく力が抜けました。

本当に離婚できた。まず思ったのはこれで、もう夫たちの姿に苦しめられることのない現実に、涙が止まりませんでした。

●離婚訴訟を終えて

裁判が終わった2日後、和解調書が届いたと連絡を受けて弁護士事務所に向かいました。調書の正本は、離婚届を出す際に必要なものと、養育費の支払いが完了するまで証拠として保管するものと2通あります。

離婚届を提出したら児童扶養手当やひとり親家庭医療費助成の申し込み、息子の戸籍の異動について家庭裁判所への申請など、まだまだやることはありますが、ひとまず離婚した状態であることに気持ちは晴れ晴れとしていました。

弁護士は「あなたが養育費について譲歩してくれたから和解が叶った」と言ってくれましたが、終わってみれば夫に奪われたものは何もなく、こんなに早く離婚が成立したのは弁護士のおかげだとつくづく感じます。

夫の浮気発覚から始まった離婚の騒動でしたが、私ひとりならここまでたどりつけたとは思えず、調停から訴訟まで、弁護士の存在は本当にプラスでした。

法テラスの援助制度が使えたのもありがたくて、悩むよりまずは相談して正解だったと実感しています。

ひとりで苦しんでいても、現実は変わりません。後悔のない選択をするために、弁護士を頼るのは大きな助けになります。

【記事一覧】
第1話 「女性に呼び出された」日曜朝8時、堂々と自宅を出た夫…私が離婚を決意した瞬間
第2話 「個人事業主でシングルマザーなんて無理だよ」否定された衝撃…頼れる弁護士に出会うまで
第3話 「借金は全額、妻に返済してほしい」離婚調停は財産分与で大モメ!
第4話 これで離婚できる!はずが… 離婚調停の成立間際、夫がまさかの「先に解決したい問題がある」と言い出して

【筆者プロフィール】内田 聡子(うちだ さとこ):フリーランスのライター。ひとり息子と猫をこよなく愛する1977年生まれ。離婚の大変さはみんな同じ。どう進めるのが正解で、何を一番に考えるのが良いのか、を常に考えています。

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