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「残価設定型クレジット」の見逃せないデメリット 夫婦のNGランキング4位を解説
(yamahide・プラナ/PIXTA)

「残価設定型クレジット」の見逃せないデメリット 夫婦のNGランキング4位を解説

夫婦円満な生活を送るためにも、できれば事前にトラブルの芽は摘んでおきたいものです。そこで、年間100件以上離婚・男女問題の相談を受けている中村剛弁護士による「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」をお届けします。

「結婚した夫婦が絶対にやってはいけないこと」連載の第4回は、車の「残価設定型クレジット」(残クレ)です。

自動車メーカーも「月々の支払い額を抑えられ、将来の買取額が保証されていて安心」などと宣伝していますが、中村弁護士は「収入が減ったり、別居・離婚という不測の事態に陥ったときに、破綻してしまいます」とリスクについて指摘します。

●「残価設定型クレジット」の仕組み

今まで、3回にわたって、本コラムにおいて、「結婚した夫婦が絶対にやってはいけないこと」として、「義父母の土地の上に家を建てる」「不動産を共有で買う」「ボーナス払い」というのをご紹介しました。続いて、4つ目をご紹介したいと思います。

結婚した夫婦が絶対にやってはいけないことその4として、車の「残価設定型クレジット(残価設定型ローン)」があります。

残価設定型クレジットというのは、車の購入の際に用いられているローンの設定の仕方です。あらかじめ、車全体の価格から、数年後の下取り価格(残価)を設定して、残価を差し引いた金額を月々返済するプランになっています。

例えば、400万円の車の5年後の残価を180万円として、残りの220万円を5年間で分割して支払う、といったものです。

分割払いの期間が終わった時点でどうするかは、通常、3つの選択肢があります。(1)新車に乗り換える、(2)残価を一括(または分割)で支払って自分が取得する、(3)車を返却する、の3つです。

残価設定型クレジットは、上記例でいえば、5年間は400万円の車を220万円の分割で支払うことになるため、月々の支払額を抑えることができます。また、最終回のときに買い換えれば、月々の支払額はあまり変わらずに新車に乗り換えることができるため、月々の支払は変わっていないのに、車が新しくなるということでメリットを感じる人もいます。

もちろん、残価設定型クレジットも、うまく使えばいいものになり得ますが、見逃せないデメリットが多くあります。

●総支払額は高くなるケースも

残価設定型クレジットの金利は、ディーラーのローンの金利に比べて低めに設定されていることも多いものの、銀行のローンに比べれば高く設定されているケースが多いです。そして、金利は、残価にもつきますので、一般的に総支払額は高くなりやすくなっています。

すなわち、一般的なローンでは、毎月支払いを続ければ、元本が減っていくことになるため、元本にかかる利息額もどんどん少なくなっていきます。しかし、残価設定型クレジットは、上記例で言えば、元本全体の400万円のうち、残価の180万円を除いた220万円を分割払いしている状況のため、180万円は元本として最後まで残り続けることになります。

金利は、元本全体を元に計算されるため、最後まで利息額はあまり減らず、その結果、支払った利息総額で見ると、通常のローンに比べて高くなるケースが多いのです。

毎月支払っている額が少ないため錯覚しがちですが、通常のローンに比べて、残価設定型クレジットで毎月支払っているのは、金利が多くの部分を占めることになり、結果として高いお金を支払うことになってしまうのです。

●エンドレスに新車を買い続けることに?

また、上記のとおり、分割払いの期間終了後は、(1)新車に乗り換える、(2)残価を一括(または分割)で支払って自分が取得する、(3)車を返却する、の3つから選択することになります。

しかし、(3)車を返却する、という選択肢は、今後車に乗らないのであればいいですが、今後も車に乗り続ける必要がある場合は、取りにくい選択肢です。仮に、他社で車を買うとしても、返却すれば今までの車を下取りに出すことができないことになりますので、初期費用などの出費がかさむことになります。

また、(2)残価を一括で支払うというのは、一般的に残価が高額であるため、これを一括で支払える人は多くないでしょう。そもそも一括で百数十万円~数百万円を支払えるような人なら、頭金で入れてしまった方が金利を抑えられます。残価を分割で支払うことができるケースもありますが、分割払いには再審査・再契約が必要になり、必ず分割払いできるわけではありません。

そうすると、実質的には、(1)新車に乗り換えるという選択肢となるケースが多いのです。ディーラーも、新車に乗り換えてくれるのであれば、様々な特典をつけてくれたりするので、新車に乗り換えるケースが多いでしょう。

しかし、その場合は他のメーカーの車に乗ることは難しくなってしまいますので、特定のメーカーのファンで乗り換える必要がない、という方は良くても、そうでない方は選択肢が狭まってしまいます。

また、常に新車を買い続けることになるため、例えば給料が下がった等の事情により、ローン支払額を抑えたいと思ったとしても、そこから抜け出すことは容易ではありません。特に、高価な外国メーカーの車で残価設定型クレジットを組んでいた場合、給料が下がっても、高価な新車を定期的に買い続けることになってしまいます。

上記のとおり、残価設定型クレジットの場合、金利を多く払うことになるため、毎月支払っている額は、実は車本体の金額ではなく、金利に多く払っていることが多いのです。そのため、いつまでも金利を支払い続けることになり、車本体はいつまで経っても完全には自分のものにならないという状況が続いてしまうのです。

●車の購入は「通常のローンで支払える範囲で」

残価設定型クレジットが全てダメというわけではありませんが、残価設定型クレジットを組むくらいなら、頭金を多めに入れて普通のローンを組んだ方が支払総額は抑えられます。

目先の毎月の支払額が抑えられるため、本来自分の収入では買えない高価な車に手を出しがちですが、そのようなものに手を出してしまうと、ボーナスローンの回で述べたとおり、収入が減ったり、別居・離婚という不測の事態に陥ったときに、破綻してしまいます。

残価設定型クレジットでしか買えないような車は、自分に見合っていない車だと割り切って、通常のローンで支払える範囲で車を購入することをお勧めします。

(中村剛弁護士の連載コラム「弁護士が教える!幸せな結婚&離婚」。この連載では、結婚を控えている人や離婚を考えている人に、揉めないための対策や知っておいて損はない知識をお届けします。)

プロフィール

中村 剛
中村 剛(なかむら たけし)弁護士 中村総合法律事務所
立教大学卒、慶應義塾大学法科大学院修了。テレビ番組の選曲・効果の仕事を経て、弁護士へ。「クライアントに勇気を与える事務所」を事務所理念とする。依頼者にとことん向き合い、納得のいく解決を目指して日々奮闘中。

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