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「奥さんと早く別れて」迫られて離婚後、再婚を拒否された男性「苦労したのに許せない」
婚約指輪も渡しましたが…(shuu / PIXTA)

「奥さんと早く別れて」迫られて離婚後、再婚を拒否された男性「苦労したのに許せない」

不倫相手の女性に迫られ離婚をしたものの、結婚する意思がないと言われた——。婚約破棄を訴える男性が、弁護士ドットコムに相談を寄せました。

男性は不倫相手の女性から「早く妻と別れて」と言われ、婚姻中でしたが、その女性と婚約しました。2000万円の慰謝料を支払い、妻と離婚したのは2年後のことでした。女性には婚約指輪を渡し、女性の両親にも「結婚を前提にお付き合いしている」と伝えたそうです。

しかし、最近になり女性から結婚する意思がないと言われました。「(女性が)昇進とともに出世意欲が強くなり、結婚する気がなくなったよう」だと男性はみています。

「新たな結婚をするために離婚に苦労したのにこのような結果になることは許せない」。憤る男性は、女性に対し婚約破棄の慰謝料を求めようとしています。果たして慰謝料は認められるのでしょうか。長瀬佑志弁護士に聞きました。

●慰謝料を請求できるとは限らない

——男性は元妻と離婚する前に不倫相手と婚約したそうですが、そもそもその婚約は有効なのでしょうか。

婚姻中に不倫をすることは違法行為であるため、不倫相手と将来婚姻することを約束するという婚約は、法的保護に値しないとも考えられます。

そのため、相談者の不倫相手が結婚の約束を一方的に破棄したとしても、当然に不法行為に基づく慰謝料を請求できるとは限りません。

——もし仮に、相談者の前妻との婚姻関係が破綻した以後の婚約であれば、契約は有効なのでしょうか

たしかに、すでに婚姻関係が破綻しており、法律上保護すべき婚姻関係が存在しないといえる場合には、不倫は違法ではなく、不倫相手との婚約も有効と考えやすいかもしれません。

しかし、結婚の約束をした際に婚姻関係が破綻していたかは、慰謝料請求かできるかどうかを決める絶対的な要件とまではいえないのです。

過去の裁判例(東京地裁平成19年2月15日判決)でも、婚姻中の男性の婚姻関係が破綻しているとまでは認定されていない場合であっても、不倫相手による婚約の一方的な破棄に対しては慰謝料約400万円の支払いを認めています。

これは男性Aと不倫相手の女性Bが、「Aは妻と別居し、Bと同棲し、離婚成立後ただちにBと結婚する」といった誓約書を取り交わしたりしたにもかかわらず男性Aが一方的に婚約を解消したというケースでした。

不倫相手との婚約が有効である場合でも、不倫相手による婚約の破棄が不当なものであると認められる場合に、慰謝料請求が認められることがあると考えられます。

——今回のケースではどのように考えられますか。

今回のケースでは、男性が多額の慰謝料を払ってまで離婚し、女性には婚約指輪を渡した上、女性の両親にも結婚を前提に交際していると告げていることからすると、女性との婚約に対する期待を保護すべき理由もあるといえます。

そのため、女性側が結婚する意思がないと翻意した事情によっては、男性から女性に対する慰謝料請求が認められる場合もあるといえるでしょう。

この記事は、公開日時点の情報や法律に基づいています。

プロフィール

長瀬 佑志
長瀬 佑志(ながせ ゆうし)弁護士 弁護士法人長瀬総合法律事務所
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか

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