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「DNA鑑定」勝手にパートナーの検体を取得したらどうなる? 法的問題まとめ
画像はイメージです(よっちゃん必撮仕事人 / PIXTA)

「DNA鑑定」勝手にパートナーの検体を取得したらどうなる? 法的問題まとめ

「妊娠したのに付き合っている彼が認知してくれない、DNA鑑定してくれとお願いしても拒否される」「離婚した夫から、子のDNA鑑定をしてほしいと言われている」。弁護士ドットコムの法律相談コーナーには、DNA鑑定をめぐる相談が多く寄せられます。

親子の関係を決める上で決定的な意味をもつようにも思えますが、最高裁の判例では、DNA鑑定がなくても父と子の関係があると判断した判例もあるようです。

DNA鑑定を行うことは法的にはどのような意味があるのでしょうか。家族の法律問題に詳しい山岸純弁護士の解説をお届けします。

●法的な効力があるわけではない

DNA鑑定自体に、法的効力があるわけではありません。DNA鑑定の結果で証明できることは、自然的血縁関係(血のつながり)があるかどうかということです。

法的な意味で親子関係を生じさせる条件は、民法の規定で定められています。民法772条1項には、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する」と定められています。つまり、婚姻関係にある夫婦から生まれた子の場合、民法772条1項によって、夫の子と推定されるわけです。

この法的父子関係の発生には、自然的血縁関係は要件になっていません。つまり、血のつながりがあるかどうかは、法的な親子関係を決める上で、決定的な条件とはなっていないということです。

他方で、婚姻関係にない母から生まれた子については、父が子を認知する事で、初めて法的な父子関係が発生します。認知は、自然的血縁関係の存在を前提に、事実として存在する父子関係を確認するものですので、DNA鑑定は極めて重要な意味を持ちます。

このように、DNA鑑定の結果から、直ちに法的親子関係が発生するわけありませんが、その基礎となる自然的親子関係を立証するのに、DNA鑑定は重要な役割を果たすという位置づけになっています。

●認知するかどうかが争いとなった場合は?

子を認知するかどうかが争いとなった場合は、DNA鑑定を行い、自然的血縁関係の有無をしっかりと確認しましょう。DNA鑑定の基礎となる検体(口腔内の細胞等)を採取するには、本人(父親と考えられる人物)の協力が必要になります。

検体の採取を強制する事は、場合によっては刑法上の脅迫罪等にあたってしまいますので注意しましょう。相手方が任意で提出してくれるように交渉する事となります。

●血のつながりがないことが明らかになったら?

血のつながりがない、つまり、自然的親子関係が無い事が明らかとなったとしても、直ちに法的な親子関係には影響しません。法的な親子関係は、子の身分関係の法的安定に資する観点から決めるべきと考えられているからです。親子関係を争うには、「嫡出否認の訴え」などの法的な手続きを経る必要があります。

最高裁は、DNA鑑定のような科学的な証拠で親子関係がないと証明しても、「嫡出の推定が及ばなくなるものとはいえない」という判断を示しています(最高裁平成26年7月17日)。こうした判例も参考になるでしょう。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

山岸 純
山岸 純(やまぎし じゅん)弁護士 弁護士法人ALG&Associates
企業法務分野で培った知識や経験を活かし、難しい時事ネタや法律論を分かり易く伝えることに日々研鑽に努めている。「いいねを押したい弁護士ブログ」、「ビジネスジャーナル(サイゾー社)」に随時コメント等を掲載中。東京弁護士会公益通報特別委員会副委員長。

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