「相手が結婚しているとは知らずに性的関係を持ってしまいました。離婚した元妻から訴えると言われています」。弁護士ドットコムに、そんな投稿が寄せられました。
相談者の女性は、1年ほど前に、居酒屋で知り合った男性店員と性的関係を持ってしまいました。男性は、知り合ったときには「結婚もしていないし、彼女もいない」と話していました。ところが、後日、男性の妻から電話がかかってきて、既婚者であることを告げられたそうです。
すぐに男性との関係を切り、「店員と客の関係に戻った」そうですが、その後に男性の妻から「訴える」と連絡がありました。
男性は既に離婚しているそうですが、既婚者と知らなかった場合でも、慰謝料を請求されることはあるのでしょうか。伊藤勇人弁護士の解説をお届けします。
●「交際するにあたって、相手に配偶者がいるかどうか調査する義務はない」
ーー男性の元妻からの慰謝料請求が認められることはあるのでしょうか。
今回のケースで、慰謝料請求が認められる可能性は少ないでしょう。
不倫の慰謝料請求の根拠は、民法上の不法行為にもとづく請求ですが、この請求が認められるためには、加害者(不倫の相手方)に故意・過失があったことが必要になります。
今回のケースで、相談者の女性は、男性が既婚者であることを知らなかったのですから、故意があったとはいえません。
また、そもそも交際にあたり、相手に配偶者がいるかどうか調査する義務はありません。この他、相談者に過失があったと認められる事情もありません。そのため、相談者の女性には過失がないと考えられます。
ーーでは、男性の妻からの電話で、男性に妻がいることを知った後は、どう考えればいいのでしょうか。
この場合、交際を続けると、「既婚者と知ったうえで交際している」ことになるので、「故意」があったとして、不法行為にあたり、訴えられた場合は慰謝料の支払いを命じられる可能性はあります。
今回のケースでは、相談者の女性は「すぐに男性との関係を切った」そうですので、不法行為にはあたらないでしょう。
ただし、不貞の慰謝料請求は、離婚にまで至ると慰謝料額が高額になる可能性もあります。男性にもきちんと話をして、交際当時、配偶者がいることを黙って交際をしていたという陳述書や、事実の確認書など証拠になるものを収集して、裁判でも証人になってくれるよう頼んでおくことをおすすめします。
(弁護士ドットコムライフ)