夫はスポーツ選手だという女性が「養育費を値切ろうとされており、許せない」と、弁護士ドットコムに相談を寄せました。夫は個人事業主のため、日頃から節税にいそしんでいます。その結果、養育費を減らされてしまいそうだというのです。
夫は個人事業主であることをいかし「プライベートの食事も、ファンとの交流イベントと偽って接待交際費として計上する」などして、できる限りの出費を経費に。最終的な所得は実際の年収の4分の1以下になっているそうです。
そのため「養育費は月4万円程度になる」といい、「夫の趣味ともいえる外食費の半分にも満たない額で到底納得できません」。確定申告のコピーはもらっていますが、領収書などはすべて夫が管理しています。
どのように、養育費を増やすことができるのでしょうか。また経費が誤魔化されていることは、どのように証明すればいいのでしょうか。 山岸陽平弁護士 に聞きました。
●子に対する扶養義務「自分と同程度の生活を保持させる義務」
「裁判所で養育費を決める場合、養育費算定表を参考にします。多くの場合、養育費算定表で示された数字の範囲内かそれに近い数字で決められます。プロスポーツ選手も自営業者にあたり、所得の認定は基本的に確定申告書によることになるでしょう」
今回のケースは、確定申告書から算出される所得の数字に問題があるようです
「どのような経費計上がなされているのか詳細まで書かれていませんので、一般事例としてお答えします。
たとえば確定申告書の接待交際費の金額が不自然に多い場合には、どうしてそのような数字になっているのか、知っている事情とともに指摘してみてはどうでしょうか。実質的には経費計上される費目によって日常生活が営まれていること、実際の夫の生活レベルはもっと高いということを指摘すればよいでしょう。
また、子に対する扶養義務とは、自分と同程度の生活を保持させる義務とされています。単に確定申告書から数字を拾って算定表に当てはめるだけでは適切な養育費の金額が算出されないということを強く主張すべきです」
会社員に比べて、個人事業主との離婚では養育費の算定に苦労がありますね。
「経費をごまかしていることを証明したい、といっても、家庭裁判所が乗り気にならないことが想定されます。真っ向からそのように言うのではなく、主張の仕方を工夫していくほうがよいのではないかと思います。
養育費の算定に関しては、法律に事細かに書かれているわけではありません。そのため、類似ケースで同じようなことを言っても、主張の仕方や証拠の出し方などで、家庭裁判所の裁判官や調停委員の受け止めが異なり、示される結論が異なる場合があります」