都内の大学に通うKさん(20歳)は、半年ほど付き合っている彼女とワンルームマンションで同棲生活を始めたが、大家さんに許可をもらっていないことを気にしている。
Kさんの彼女は社会人の姉と2人暮らしをしていたが、大学に近いKさんのマンションに頻繁に泊まるうちに、いつしか姉と住むマンションには帰らず、もっぱらKさんのマンションで寝泊まりするようになった。着替えなどの私物も、徐々にKさんのマンションに移し、今では完全にKさんのマンションで暮らすようになっている。
ただ、Kさんは入居するとき、マンションは「一人用」と説明されており、一人で住むと不動産会社に申告している。彼女との甘い同棲生活に幸せを感じつつも、大家の許可を得ないで住むことが問題にならないのか、気になっているそうだ。
一人用のワンルームマンションに大家の許可を得ずに同棲することは、法的に問題となるのだろうか。バレたら、「出て行け」と言われても仕方ないのだろうか。賃貸の法律問題に詳しい関戸淳平弁護士に聞いた。
●「一人用」という特約は有効なのか?
「大家から『出て行け』と求められるということは、法的には、賃貸借契約の解除が認められるかどうかという問題です」
ただし、契約の解除が常に認められるわけではないようだ。関戸弁護士は「特約」の有効性が問題になると指摘する。
「まず、特約の内容が合理的でなければ、特約自体が無効とされる場合があります。今回のケースで言えば、『一人用』という点が特約です。
ケース・バイ・ケースで考える必要がありますが、たとえば、単身女性専用マンションなどのように、入居者の制限が合理的といえる場合には、特約は有効となります。
他方で、『子供が生まれたら退去する』といった特約は、過度に私生活を制限するものであり公序良俗違反として無効となることが多いでしょう。
今回のケースでは、マンション全体が『単身用』であり、建物の構造上も複数人の生活に馴染まないようであれば、『一人用』との特約は有効となるでしょう」
●大家との信頼関係が壊れている場合、解除される可能性も
特約が有効とされた場合、問答無用で、契約を解除されてしまうのだろうか。
「特約自体が有効でも、解除が制限されることがあります。
判例では、解除の有効性を判断する際、『大家との信頼関係が破壊されているか』という点も加味する傾向にあります。
入居者の結婚、同棲、出産等によって人数が増え、形式的に契約違反がある場合でも、大家との信頼関係の破壊には至らない事情があれば、解除が制限されます」
今回のケースでは、どう考えればいいのか。
「同棲のみをもって『信頼関係の破壊』があるかは微妙ですが、同居による騒音など他の違反行為が認められれば、解除もあり得ます。
法的には以上のとおりですが、無用なトラブルを避けるためには、契約書に書かれたルールは基本的には守るべきでしょう」
関戸弁護士はこのように述べていた。