もうすぐ忘年会シーズン。部署や若手で「出し物」をする会社もあるのではないでしょうか。中には「やりたくないのに半ば強制的にやらされる」と悩んでいる人もいるようです。
都内の広告関連会社に勤めるミノリさん(仮名・20代)は、先日行われた忘年会がトラウマになっています。かぶり物など手軽なモノマネを考えていましたが、上司は「それじゃ面白くないよ!」と却下。「ひょっこりはん、やんなよ」と全身タイツで人気のお笑い芸人の真似をするよう言われました。
結局、白い目で見られながらなんとか断り、裏方を買って出てなんとか逃れました。ミノリさんは「時間の無駄すぎる。(出し物をノリノリでやるのが苦じゃない)リア充は怖い。押しつけてくるなんて、いじめっ子の発想ですよね」とこりごりの様子ですが、新年会の準備もすでに始まっているそうで、戦々恐々としています。
ツイッターでも「若手なので忘年会でUSAやります...」「忘年会でUSAを踊らされるのだが、練習がだるすぎる」と、今年大ブームになった音楽グループDA PUMPの「U.S.A」についてのつぶやきが散見されました。
会社の忘年会で出し物や余興を強要することは、パワハラにならないのでしょうか。
●パワハラに該当する可能性が高い
大山弘通弁護士は「これはパワハラに該当する可能性が高いです」と指摘します。
「パワハラが何かについては、厚生労働省が2018年3月『職場のパワーハラスメント防止対策についての検討会』報告書として発表したものが参考になります。
この報告書では、パワハラを、(1)優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること(2)業務の適正な範囲を超えて行われること(3)身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、という3つの要素を満たすものと整理しています。
いわゆるパワハラ裁判における裁判所の判断も、おおむねこの3つの要素で判断するものが多いといえるでしょう」
パワハラかどうかは、上記の3要素が鍵になるということだ。忘年会で出し物を強要された場合は、どうだろうか。
「上司がミノリさんに対して忘年会で行った行為は、優越的な関係に基づいており(1)に該当し、全身タイツの格好で人気芸人の真似をさせるという身体的若しくは精神的な苦痛を与えている行為といえそうです(3)。
また、忘年会での出し物や余興は、業務の適正な範囲ともいえない場合がほとんどでしょう。その意味で(2)にもあたると言えます。
ちなみに、『優越的な関係に基づいて』という要素については、上司が部下に対して行う嫌がらせが想定されることが多いと思いますが、同僚による嫌がらせ、部下の上司に対する嫌がらせも考えられます。
この件をきっかけに同僚が無視をする行為、部下が特定の上司(ミノリさん)に対する指示のみ全く従わないなどの行為もパワハラに該当しうるでしょう」