2018年10月25日 09時21分

岡口裁判官処分「the last straw」理論の危うさ 過去の行いの積み重ねでアウトに

岡口裁判官処分「the last straw」理論の危うさ 過去の行いの積み重ねでアウトに
岡口裁判官(10月17日撮影)

ツイッターの投稿をめぐり、最高裁による戒告処分となった東京高裁の岡口基一裁判官。処分の決定理由に出てくる「the last straw」(最後のわら)という言葉が注目されている。

この言葉は、補足意見として出てきたものだ。決定文では、「ラクダの背に限度いっぱいの荷が載せられているときは、麦わら一本積み増しても、重みに耐えかねて背中が折れてしまうという話から、我慢を超えさせるものの例え」と紹介されている。

岡口裁判官は、今回問題視された犬の所有権についてのツイートだけでなく、これまでにもツイートをめぐり、厳重注意を受けていることから、今回のツイートが、我慢を超えさせる「the last straw」になったということのようだ。

この「the last straw」理論について、ツイッターなどでは、「よく理解できない」「危険な考え方ではないか」などの指摘も出ているが、どう考えればいいのか。猪野亨弁護士に聞いた。

●「極めて乱暴な論理」

最高裁は、「the last straw」という言葉を用いて、今回の戒告処分を正当化しようとしています。

今回の最高裁決定の最大の問題は、岡口判事がツイートした内容で、本当にそれだけで当事者の感情を害したと言えるのかについて理由らしい理由もなく、断定的に認定している点です。本来であれば当事者本人が感情を害したと自己申告するだけでは足りず、法的にも害したと評価できるものでなければなりません。

それが今回の決定では裁判官としてわかる形でのツイートだということで裁判官としての品位を害するとされたのですが、補足意見は、この部分を補足しようとしたものと思います。

この論理は極めて乱暴なものです。この論理に従えば、今後、岡口判事が再びツイートにかぎらず何らかの発信をした場合、常に「ラクダの背に限度いっぱいの荷が載せられている」状態ということになりますから、例え些細なものであっても分限裁判における戒告が正当化されてしまうということになりかねません。そのような状態が永続化するということでもあります。

逆にいえば、この論理がなかったら今回の戒告処分も正当化する論拠にも欠くということにならないでしょうか。この補足意見は、今回の岡口判事のツイートは「the last straw」(最後のわら)程度の重みしかないということの裏返しともいえます。当該ツイートの問題点を積極的に理由付けができないからこそ、最高裁は断定的に当事者の感情を害すると認定したと評価せざるを得ません。

●「他の問題にも波及しかねない」

過去の行状をみて量刑を決めること自体が問題というわけではありませんが、あまりに軽微な事案や本当にそれが処分に値するのかというものが対象になる場合が問題です。

仮に岡口判事のツイートが問題にされたのが初めてということであれば戒告処分に当たるようなものでないことは当然ですが、注意処分にもなり得るものではないでしょう。

このような「the last straw」の論理がまかりとってしまうと他にも波及しかねません。例えば公立学校での卒業式などで国歌斉唱の際に起立しない教員に対して最高裁は戒告を限度とし、仮に反復されていたとしても、式を妨害するなどの行為などの事情がなければ減給は重すぎると判断していましたが、「the last straw」の論理では不起立を繰り返した場合、減給や出勤停止などの処分も正当化されかねませんし、従前、東京都はこの論理で教員を処分してきていたわけです。

それ自体が大したことがないというものをこの論理を使えば、簡単に処分を正当化できてしまうことになり、大いに問題があります。

(弁護士ドットコムニュース)

取材協力弁護士

猪野 亨弁護士
今時の司法「改革」、弁護士人口激増、法科大学院制度、裁判員制度のすべてに反対する活動をしている。日々、ブログで政治的な意見を発信している。
事務所名:いの法律事務所

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