取引先にトラブルについてメールで問い合わせをした際、そのトラブル当事者まで「CC」に加えられており、意図せずに情報漏えいされてしまったーー。そんな相談が弁護士ドットコムの法律相談コーナーに寄せられました。
相談者によると、今回の当事者は、相談者【A社】、取引先【B社】、仲介会社【C社】の3者。
相談者(A社)は、「B社」との取引を仲介した「C社」にある疑いを抱いたため、B社に事実関係をメールで問い合わせしたそうです。すると「B社」はなぜか「関係者だから」という理由で、勝手に「C社」をCCに入れて返信してきたそうです。
相談者は、B社がこのメールを送ったことで、C社が逃げて連絡がつかなくなるなどの実害が出ることを懸念しています。情報漏えいしたことについてB社の責任を問えるのでしょうか。IT問題にくわしい最所義一弁護士に聞きました。
●公開を予定していない個別のやりとりか否がポイント
どのような場合、法的な問題に発展するのでしょうか。
「CCに加えられたことで実際に法的問題に発展するかどうかは、メールの内容によると思います。基本的には、公開を予定していない個別のやりとりか否かという点がポイントとなりますが、一般的には、特定人に宛てたメールは、公開を予定したものとはいえないでしょう。
仮に企業間の交渉過程において第三者への公開が予定されていない営業秘密に該当するような事実が漏れてしまった場合には、その損害は極めて甚大なものとなってしまいます。
特に、企業間の交渉では、どの程度のディスカウントを行ったかという情報も、営業を行う上では重要な情報になりますし、仮に、営業秘密に該当するようなものやM&Aの情報等に該当するものであれば、情報が漏れたことで、極めて重大な損害が発生してしまうことにもなりかねません。
その意味では、相手方の承諾なく、安易に社外の人間をCCに加えることは、厳に避けるべきでしょう」
●情報漏えいの損害賠償は立証が難しい
では、今回のケースで損害賠償請求を行うことは可能でしょうか。
「情報漏えいに基づいて損害賠償を行う場合、発生した損害の立証やその損害との間の因果関係の立証は、未だ実害が生じていない段階では非常に困難です。
法人の場合にも、法人自体の社会的評価または信用が低下したことを理由とする『無形損害』が認められる場合もありますが、一般的には、それほど高額な賠償が認められるものではありません」