2018年04月29日 10時51分

「山口メンバー」報道から振り返る、芸能人呼称の歴史 逮捕・書類送検で各社対応は?

園田昌也 園田昌也
「山口メンバー」報道から振り返る、芸能人呼称の歴史 逮捕・書類送検で各社対応は?
写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ

アイドルグループ「TOKIO」の山口達也さんが、強制わいせつ容疑で書類送検された事件で、多くの報道機関が「山口メンバー」と表現したことが話題になっている。

メンバーといえば、2001年にSMAPの稲垣吾郎さんが駐車違反と公務執行妨害で現行犯逮捕(不起訴処分)された際、「稲垣メンバー」と報道され、話題になったことが思い出される。

しかし、当時の一般紙は軒並み「容疑者」で伝えていた。弁護士ドットコムニュースは朝日・毎日・読売(朝毎読)三紙のデータベースを検索。その結果、読売新聞では、逮捕や書類送検で芸能人の「メンバー」呼称は見当たらなかった。

一方、朝日新聞は2007年に、ロックバンドのボーカルが銃刀法違反容疑で書類送検(続報見当たらず、処分不明)された際、「メンバー」という呼称を使用。毎日新聞は、2006年にお笑いコンビの一方が、強姦容疑で書類送検(不起訴処分)された際に「元メンバー」を使っていた。

過去の新聞、雑誌から報道における芸能人の「呼称」の歴史を探ってみたい。

●「メンバー報道」は稲垣さんがきっかけ? テレビ局には抗議殺到

稲垣さんが逮捕されたとき、朝毎読はいずれも「容疑者」を使っている。総合週刊誌や女性週刊誌も「容疑者」か呼び捨てのどちらかだ。問題はテレビだった。

「釈放されると同時に各ニュース番組は呼称を“稲垣容疑者”から“稲垣メンバー”への変更。つまり“容疑者”では強すぎるし、かといって“さん”や“氏”もどうか? それじゃあ“SMAPのメンバー”ってことにしとこう、ってことに!!」(「週刊女性」2004年11月23日号)

逮捕されたとき、一般人であれば「容疑者」だ。「『メンバー』では公平性が保てない」と、テレビ各局に抗議が殺到したという。

稲垣さんの「メンバー」呼称について、「週刊ポスト」(2001年9月14日号)は、各局広報の次のようなコメントを紹介している。

「本人が釈放され、社会復帰への第一歩を踏み出したと認識したからです。ただ、容疑者という法的な側面があるのも事実なので“さん”や“氏”は不適当と判断し、“メンバー”ということになりました」

「在宅捜査が決定した場合、肩書もしくは敬称をつけることになっているからです」

稲垣さんの報道をめぐっては、テレビ局が及び腰だったため、「恐縮です」の挨拶で知られる芸能レポーターの故・梨元勝さんが朝のワイドショーの出演を拒否する事態もあった。

●「草彅メンバー」実はあまり使われなかった?

一方、同じSMAPの草彅剛さんが2009年、公園で裸になったとして公然わいせつで現行犯逮捕(不起訴処分)されたときはどうだったか。実はこのとき、「メンバー」はあまり使われなかったようだ。梨元さんが「週刊朝日」(2009年5月15日号)のコラムで次のように書いている。

「今回はご存知のとおり、釈放されるまでは『草彅剛容疑者』であった。(略)当時【編注:稲垣さん事件のとき】『メンバー報道』への批判はマスコミ内部にもかなりあったように見た。その反省が今回の伝え方に表れたと思いたい。ただ、一部マスコミに当初、『メンバー』と伝えようとした動きがあった。釈放後には『さん』をつけすぎる嫌いも感じた」

どうやら、このときテレビで逮捕時に「肩書・敬称」がつくことへの見直しがあったようだ。

●書類送検では微妙な呼称が続々「司会者」「所属タレント」

一方で、芸能人の書類送検に関しては、稲垣さん以来、微妙な呼称が増えたと見える。

たとえば、島田紳助さん(2011年に芸能界引退)が2004年、所属事務所の女性に怪我を負わせ、書類送検(略式起訴、罰金30万円)されたとき。朝日新聞は次のような記事を掲載している。

「日本テレビは『島田紳助さん』、NHKは『吉本興業の島田紳助所属タレント』、テレビ朝日などは『島田紳助司会者』、フジテレビは『島田紳助容疑者』とした」(同年11月15日)

各社への取材結果も書かれており、記事からは書類送検に際し、多くのテレビ局で「一般人は匿名」、「公人は肩書または敬称付き実名」という基準が設けられていることが読み取れる。

一方、新聞に目を戻すと、島田さんのとき、朝毎読はいずれも「容疑者」を使っている。なお、共同通信加盟社では「島田タレント」という表現が登場。翌年も別の芸能人が道交法違反で書類送検(不起訴処分)されたときに「タレント」を使っている。

●山口さん事件、読売は「容疑者」 性暴力関係では起訴見込めなくても使用例多し

今回の「山口メンバー」報道のポイントは、書類送検であることに加え、示談が成立してるので起訴される可能性はほとんどないという点だ。

市販されている共同通信の記者ハンドブックでは、書類送検で実名を出す際は「肩書・敬称」をつけるよう書かれている。朝日新聞も基本は同じだが、社会的影響が大きいときは「容疑者」を使う場合があるとしている。

たとえば、ロック歌手の布袋寅泰さんが2007年、傷害容疑で書類送検(略式起訴、罰金30万円)されたとき、朝毎読は「容疑者」を使っている。

一方、お笑いコンビ「どぶろっく」の江口直人さんが許可なくカミツキガメを飼育して書類送検(略式起訴、罰金30万円)された際は、毎日・読売が「容疑者」とした一方、朝日は「さん」とした。

その点で行くと、今回の山口さんのケースでは、朝日・毎日が「メンバー」、読売が「容疑者」と見解が分かれている。起訴の見込みが薄い書類送検事案で「容疑者」は珍しいケースと言えそうだ。

検索してみると、過去には冒頭で紹介したお笑いコンビの片割れのケースで、「元メンバー」とした毎日を除く、朝日と読売が「容疑者」を使用。このほか、朝日新聞は2011年、あるお笑いタレントが準強姦容疑で書類送検(示談が成立しており不起訴処分だったと見られる)された際に、「容疑者」を使っている。性暴力関係は起訴が見込めなくても、「容疑者」が使われることが多いようだ。

各社に実名報道や呼称の判断方法を聞いたところ、朝日は「事案の軽重や当事者の属性などを踏まえて」と回答。毎日は「事件の内容を総合的に検討」、読売は「事案の内容や捜査当局の送検時の意見などを踏まえ」判断しているとのことだった。

(弁護士ドットコムニュース)

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