NHKの受信料制度をめぐり、ワンセグ訴訟など複数の裁判が起こされている。原因の1つは、1950年の施行当時から存在する条文の曖昧さにある。
放送法64条1項は、契約義務について「協会(編注:NHK)の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」(旧放送法32条1項)と定めている。
ワンセグ訴訟で行けば、持ち運んで使うワンセグ携帯は「設置」に当たるのかという疑問がある。3月22日、初めての高裁判決があり、携帯電話も設置に当たるとの判断が示された。一審が支払い義務はないとした事件も3月26日に高裁でひっくり返っている。
また、テレビ備え付けの賃貸物件では、「受信設備を設置した者」は物件のオーナーになるのか、入居者になるのかという問題もある。現在、レオパレスの元入居者が最高裁で争っているが、一審では物件オーナー、二審では入居者と判断が割れている。
二審判断は、受信設備を占有・管理している者も設置者に当たるという内容だ。一方、NHKがホテルを相手取った訴訟では、ホテルに各部屋ごとの支払い義務がある(=ホテルが設置者)と判断されている。レオパレス物件もホテル客室もテレビを占有管理しているのは利用者だ。裁判所がどうやって整合性を取るのかも注目される。
なお、NHKは総務省の認可が必要な放送受信規約で、「設置」について「使用できる状態におくことをいう」(第1条2項)としており、各種の契約種別なども定義している。ただし、受信料制度を合憲とした昨年12月の最高裁判決では、規約ではなく、放送法の中で契約内容を明確にするのが望ましいとの補足意見も出ている。
●NHK「自らが受信契約者となることはない」
ちなみに、NHKの局内にもテレビがある。元NHK記者によると、業務用携帯はワンセグが映らないiPhoneだったそうだが、テレビが見られるチューナーも配布されていたという。
条文に即せば、NHKも「受信設備を設置した者」になるが、自らに受信料を払うことはあるのだろうか。弁護士ドットコムニュースは3月6日、NHKに法的根拠も含めて問い合わせた。3月19日に回答があり、NHKは「(放送法64条1項の)趣旨に鑑みて、NHK自らが受信契約者となることはないものと考えています」。
当然といえば当然だが、「NHKがNHKと契約を結ぶ」のはおかしいという考えということだ。一方、関連団体については別法人なので、契約を結ぶ必要があるという。たとえば、NHKエンタープライズは「受信料はまとめて支払っている」と回答した。
なお、NHKによると「職員が自宅に設置したテレビ等については、職員それぞれが受信契約を結んでいます」とのことだった。