大阪・門真市の通学路で乗用車が猛スピードで走る様子を映した動画が、インターネットに投稿されて、話題になった。この車を運転していた19歳の少年ら2人が5月26日、殺人未遂の疑いで逮捕された。報道によると、警察の取り調べに「殺すつもりはなかった」と容疑を否認しているという。
門真市教育委員会によると、動画は5月19日夕方に撮影された。現場に居合わせた生徒が学校に連絡したことから発覚したという。映像は車内から撮られたものとみられ、クラクションを鳴らして「どけ」と怒鳴りながら走行する様子や、下校中の生徒たちが逃げ惑う様子が映っている。
少年らは「生徒たちが道路に広がって歩いていて邪魔なので、思い知らせるためにスピードを出した」と供述しているという。今回、幸いにもケガ人は出なかったが、こうした事故につながりかねない運転行為は、法的にどんな問題があるのだろうか。木野達夫弁護士に聞いた。
●殺人の「故意」を有していた場合、「殺人未遂」が成立する可能性がある
「まず、道路交通法の観点から、最高速度違反(同法22条)や安全運転義務違反(同法70条)などに該当するでしょう」
今回のケースでは、少年ら2人が殺人未遂で逮捕された。刑法の問題としてみた場合はどうだろうか。
「殺人の『故意』を有して、自動車を猛スピードで走らせ、実際に人をはねて死亡させれば殺人罪(刑法199条)になります。
実際に人をはねて死亡させなかったとしても、殺人の『故意』を有して自動車を暴走させれば殺人未遂罪が成立する可能性があります。
ただ、今回のケースでは、クラクションを鳴らしていたことや『小中学生が邪魔なので思い知らせようと思った』などの供述からすると、殺人の『故意』を認定するのは少し難しいように思います」
●「暴行罪」が成立する可能性も
殺人の「故意」が認められない場合、ほかの罪にあたらないのだろうか。
「過去の裁判例などに照らすと、『暴行罪』(刑法208条)が成立すると思います。
一見、自動車の走行と『暴行』という言葉は馴染まないようにも思えますが、暴行罪における『暴行』とは、『人の身体に対する不法な有形力の行使』を意味するとされています。
そして、他人を殴ったり、蹴ったりすることはもちろんですが、『必ずしも身体に接触することを要しない』とされています。
たとえば、人に向かって石を投げる行為や棒を振り下ろす行為は、実際に身体にあたらなくても、暴行罪が成立します。
このような暴行罪の性質からすれば、自動車の走行でも、危険な速度で人のすぐ近くを走り抜ける行為は『暴行』にあたると考えられます。
なお、今回のケースで、仮に、子どもたちが逃げようとして転んでケガした場合には、傷害罪(刑法204条)が成立すると考えられます」