特定の人種や民族に対する差別をあおる言動「ヘイトスピーチ」の解消を目指した法律「ヘイトスピーチ解消法」が5月24日、衆議院本会議で可決、成立したことを受けて、参議院法務委員会の超党派メンバーが、東京・永田町の参議院議員会館で記者会見を開いた。民進党の有田芳生参議院議員は「現場で『差別を許さない』と怒りの声をあげた人や、この問題を冷静に取り上げてきた人たちの勝利への第一歩だ」と述べた。
この法律は、ヘイトスピーチを「公然と生命、身体、自由、名誉もしくは財産に危害を加えることを告知し、または著しく侮辱する」などして、日本以外の国または地域の出身者を「地域社会から排除することを扇動する不当な差別的言動」と定義した。
国や地方自治体に対して、ヘイトスピーチにかんする相談や紛争の防止にあたる体制を整備すること、教育・啓発活動に取り組むことなどを求める内容になっている。一方で、「表現の自由」との兼ね合いから、ヘイトスピーチを禁止する規定や罰則は設けられていない。
●「『表現の自由』とのバランスを考えて、最善の法律ができた」
会見で、有田議員は「差別主義者はこれからも挑戦してくるだろう」と述べ、実際にヘイトスピーチデモが来月計画されていることを指摘した。こうした状況に対応するため、さらなる対策が求められることを強調した。
自民党の西田昌司議員は「『表現の自由』とのバランスを考えて、最善の法律ができた」と振り返った。そのうえで、「『ヘイトをしている人たちは、国会が許さない』『国民は差別のない社会をつくる』という努力義務を法律で認めた。ヘイトスピーチをするという考えはただちに捨てていただきたい」と訴えた。
公明党の矢倉克夫議員は、参議院法務委員会で全会一致で可決したことを強調しながら、「みんなが共生する社会をつくっていかないといけない」「その社会に向けて全力でがんばっていくことを誓って、戦っていく第一歩となる。ヘイトスピーチのような言論のない社会をつくっていきたい」と述べた。
共産党の仁比聡平議員は、今回の法律がヘイトスピーチの違法性を明確にしていない点などを問題としながらも、「被害の深刻さ、その根絶をもとめる当事者や国民の声に政治、政党、会派議員が動かされた。ヘイトスピーチ根絶に向けた立法府の意思を明確に示す意義をもっている」と評価した。