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「ブラとパンティ」の中年男性、路上で「服貸して」と声かける――何かの罪になる?
さすがに「脱いで貸す用の服」なんて持ってない(写真はイメージ)

「ブラとパンティ」の中年男性、路上で「服貸して」と声かける――何かの罪になる?

「服を盗まれたから、貸して」。帰宅途中の女性に突然、そんな言葉をかけてきたのは、白いブラジャーとパンティ姿の中年男性だった――。

スポーツ報知によると、神戸市中央区の路上で6月上旬、午前4時ごろに女性が歩いて帰宅していたところ、女性用下着姿の男性が突然現れて、「服を盗まれたから、脱いで貸してほしい」と声をかけてきた。無視して立ち去ろうとすると、後をつけられたため、女性は走って逃げて、110番をかけた。警察が駆けつけたとき、すでに男性の姿はなかったという。

男性は約180センチの長身で、体型はやせ型。年齢は30~40代。身につけていたのは女性用の下着だけだったそうだ。警察は男性の行方を追っているが、一方で、公然わいせつや県迷惑防止条例違反の対象にはならないと説明しているという。

今回のケースは、本当に何らかの罪にあたらないのだろうか。刑事事件にくわしい鈴木淳也弁護士に聞いた。

●軽犯罪法に触れる可能性がある

まず、路上を下着だけで歩く行為は、公然わいせつ罪に問われないのだろうか。

「公然わいせつ罪における『わいせつな行為』とは

(1)性欲を刺激、興奮または満足させる行為

(2)普通人の性的羞恥心(しゅうちしん)を害する行為

(3)善良な性的道義観念に反する行為

とされています。

たとえば、ことさらに陰部を露出する行為や、性交または性交類似行為のことです。なので、今回のケースは『わいせつな行為』にはあたらず、公然わいせつ罪の成立は難しいでしょう」

ほかの罪に問われる可能性はないのか。

「軽犯罪法違反には、『公衆の目に触れるような場所で公衆にけん悪の情を催させるような仕方でしり、ももその他身体の一部をみだりに露出した』人は、処罰されると定められています(同法1条20号)

今回のケースでは、男性が女性用の下着だけを身に着けて路上にいました。公衆の目に触れる場所で、かつ、公衆に不快な思いをさせることになるでしょう。

ですので、私の見方では、軽犯罪法に触れる可能性があると思います」

●迷惑防止条例の「卑わいな言動」にあたる可能性も

報道によると、警察は迷惑防止条例の対象にならないという見解のようだが、この点についてはどうなのだろうか。

「迷惑防止条例は、各都道府県によって内容が若干異なるので、一概に、という話はできませんが、多くの都道府県の条例では『卑わいな言動』を禁止する規定があります。

今回の『事件』が起きた兵庫県の迷惑防止条例でも、『何人も、公共の場所または公共の乗物において、人に対して、不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない』とあります(同条例3条2項)」

ここでいう「卑わいな言動」とはどんなものだろうか。

「最高裁判所は、迷惑防止条例の『卑わいな言動』の意味を、『社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語または動作』と定義しており、衣服を着用した状態の女性の臀部を約11回にわたり撮影した行為が、『卑わいな言動』にあたり迷惑防止条例違反になると判断したケースもあります」

では、今回のケースは、兵庫県の迷惑防止条例に違反するのだろうか。

「路上で異性の下着姿で歩き回り、かつ『服を脱いで貸して』と言い寄ったことを合わせて考えれば、不安を覚えさせる『卑わいな言動』にあたると判断され、迷惑防止条例に違反する可能性がでてきますね」

鈴木弁護士はこのように述べていた。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

鈴木 淳也
鈴木 淳也(すずき じゅんや)弁護士 鈴木淳也総合法律事務所
第一東京弁護士会所属。大学時代は理学部に所属し、地球温暖化システムについての研究をしていた。しかし、多くの人と触れ合い、広く社会の役に立てる仕事に就きたいと考え、決まっていた就職を辞退し、司法試験を目指すことに。気象予報士の資格を持つ理系弁護士として、民事・刑事を問わず困っている人に寄り添う弁護活動を行う傍ら、お天気情報をブログで発信している。

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