2014年もあとわずか。新年に向けて、年賀状の送り先やデザインについて考え始めた人も少なくないだろう。ところで、この時期になると毎年のようにわき起こるのが「子どもの写真入り年賀状」にかんする議論だ。
ネット上では「年賀状で成長を見られると嬉しい」と肯定的な見方がある一方、「子どもがいない人への配慮に欠けている」「他人の子どもを見せられても興味ない」と否定的な意見も見られる。なかには、「子どもの個人情報は大丈夫なの?」と心配する声もあった。
年賀状には送った人の住所が載っている。それに加えて、子どもの実名や顔写真を載せれば、確かにリスクが皆無とは言えなさそうだ。子どもの写真入り年賀状を送るリスクについて、弁護士はどう見るのか。石井邦尚弁護士に聞いた。
●年賀状のリスクは低い
「親たちが心配するのは、子どもの情報が漏れて犯罪などに巻き込まれるリスクでしょう。
ただ、情報の漏えいという意味では、年賀状よりも、SNSのほうがリスクが高いと思います。アップした写真にタグ付けされたり、写真が共有されたりして、自分では思ってもいなかった人にまで、子どもの写真が見られてしまうというケースは少なくないはずです」
年賀状のリスクは、そういったケースに比べると低い?
「そうですね。あえてリスクをあげるなら、受け取った人が、将来シュレッダーなどにかけずに廃棄したりして、子どもの写真など個人情報が漏えいするといった場合でしょうか」
家庭から廃棄された年賀状をわざわざ収集する、というのはよほどのことだろう。
「また、これもあえて言えばですが、受け取った人が年賀状をスキャナーで読み取ってインターネット上で公開するケースでしょうか。
これだと、プライバシー侵害や肖像権侵害として、受け取った人の法的責任を問う余地もでてきます。
年賀状を出し合う仲で、そんなことをする人はまれでしょうが、子どもの写真に批判的な人が多くなってくると、出す相手によって、年賀状の内容を使い分ける人も増えてくるかもしれませんね」
●個人情報を自ら管理する時代に・・・
「最近は、個人情報保護の意識の高まりで、学校の名簿にも、住所を載せないケースが多いようです。やむを得ない面もあるでしょうが、わざわざ本人に住所を聞かないと年賀状も送れないというのにも、寂しさを感じます。
意外な異性から届いた年賀状に『ドキッ』として心が浮き立つ・・・といったことも、今はないのでしょうね(笑)」
石井弁護士はこのように述べていた。
多くの人がネットで連絡をとる時代だ。「年賀状」の役割も変化しているといえるのだろう。その結果として、心ときめく「ドキッ」が減っているとすれば、確かにちょっと寂しいかもしれない。