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ヘイトとたたかう姿勢評価、在日コリアン女性らに「人権賞」 東京弁護士会
崔江以子さん(中央)ら(2020年11月30日/弁護士ドットコム撮影)

ヘイトとたたかう姿勢評価、在日コリアン女性らに「人権賞」 東京弁護士会

東京弁護士会は11月30日、第35回東京弁護士会人権賞を発表した。差別解消のための活動をしている在日コリアン3世で、川崎市在住の崔江以子(チェ・カンイヂャ)さんら2人と1社が受賞した。この日おこわれた記者会見で、崔さんは次のように喜びを口にした。

「胸を張って(賞を)いただきたいと思っている。でも、私個人が受賞したとは思っていない。差別のない社会を願い行動するすべての市民と、それを支える弁護士の先生の活動が受賞に結びついた」

●これまで夜回り先生やビッグイシュー日本などが受賞してきた

東京弁護士会人権賞は、国際的な人権活動や人権思想の確立のための研究・啓発活動などに尽力した人たちを表彰するもので、1986年から続いている。これまでに「夜回り先生」こと水谷修さんや、雑誌『BIG ISSUE』日本版の発行元「ビッグイシュー日本」などが選ばれている。

今回の受賞理由について、選考委員会の福田泰雄委員長(一橋大名誉教授)は、推薦のあった10件中で、崔さんが被差別当事者として、自身もヘイトスピーチを受けながらも、地元の川崎市で市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」の立ち上げに加わったことを挙げた。

さらに、2016年のヘイトスピーチ解消法制定のために、崔さんが参議院法務委員会で意見陳述をしたことや、現在も川崎市内の学校で、反差別啓発のための活動をおこなっていることにも言及した。

●師岡弁護士「ネット上での嫌がらせが続いている」

一方で、崔さんは、2016年のヘイトスピーチ解消法や、日本ではじめてヘイトスピーチに刑事罰を科した川崎市の「差別のない人権尊重のまちづくり条例」が2019年12月に制定してからも、ネット上のヘイトスピーチが野放しであることに触れて、次のように心情を吐露した。

「加害は続いていても、川崎市が『市民を差別から守る』と宣言したことは、心強い。被害救済は追い付いていないものの、ネットの差別的な書き込みを本人ではなく、市が運営会社に削除依頼するようになったことで、二次被害を免れている。今後さらに、制度が整っていくことを願っています」(崔さん)

東京弁護士会所属で、ヘイトスピーチ問題にくわしい師岡康子弁護士は「崔さん個人の頑張りだけではないが、身を挺して被害を訴えたことが正当に評価されたのはうれしい。しかし、現在も差別を楽しみたい人のターゲットになり、ネット上での嫌がらせが続いている。弁護士会など公的な機関と社会は、崔さんを守るべきだ。今回の受賞は、崔さんとともに弁護士会が差別と闘うという宣言だと受け止めている」と語った。

●オリンパスの濱田さんも受賞した

この日は同時受賞した濱田正晴さんも会見に参加した。

濱田さんは2007年、勤務していたオリンパスで、上司が短期間の間に、複数の取引先社員を中途採用しようとしていることを知り、社内のコンプライアンス室に内部通報をおこなった。

すると、不当な人事異動や著しく低い評価を受けるなど、パワーハラスメントに晒されるようになり、2008年に濱田さんは会社を提訴し2012年に最高裁で勝訴している。濱田さんは提訴後も勤務を続けていたが、この日が定年退職日であることを明かした。勤務を続けながら会社と戦ってきた原動力について、濱田さんは次のように語った。

「私自身、何も悪いことをしていないから、泣き寝入りはできないと思っていた。内部通報は制度に基づいた行動であるのに、公益通報者保護法(内部告発を行った者を保護する法律)がザル法で、正直者を守るものではなかったことが、裁判を続けるうちにわかってきた。

そんな中で今年6月、国会に参考人として呼ばれ、その5日後に改正公益通報者保護法が制定された。自分が被害者になってやってきたことの結果が、実行力のある法律につながったのはうれしい。そして、オリンパスは今後、人権擁護をけん引する会社であってほしい」(濱田さん)

なお、会見に欠席した受賞者の北洋建設(札幌)は、長年にわたり刑務所の出所者の雇用を続けて、現在約60人いる従業員のうち、3分の1が出所者だという。さらに、障がい者も積極的に採用したり、少年の補導委託を受けていることなどが、受賞の理由となった。

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