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在宅勤務の父、車に娘置き忘れ死亡…夏に増える悲劇、「仕組み」で防ぐ議論も
画像はイメージです(Evgenii / PIXTA)

在宅勤務の父、車に娘置き忘れ死亡…夏に増える悲劇、「仕組み」で防ぐ議論も

茨城県つくば市で6月17日、2歳の女児が亡くなる事故が起きた。長時間、車に放置されたことが原因だとみられる。

報道によると、この日の朝、父親が子ども2人を乗せて自宅を出発。長女を小学校に送り届けたあとに帰宅したが、次女が後部座席に残ったままだった。

父親はそのまま在宅勤務し、約7時間後に長女を迎えに行った際、車内で次女がぐったりしているのに気がついたという。「保育園に預けてくる予定だったが忘れていた」などと話しているそうだ。母親は出勤していたという。

●夏に増えがちな「パチンコ放置」

6月に入り各地で35℃を超える「猛暑日」が記録されるなど、暑い日々が続いている。例年、夏場には、車内に取り残された幼児が熱中症などで亡くなる事件が起きる。

法律上、子どもを車に放置して死なせてしまった親は、保護責任者遺棄致死罪(刑法218条、219条)に問われ、3年以上の有期懲役となる可能性もある。

たとえば、2017年5月に山口県のパチンコ駐車場で起きた、生後2カ月の女児が亡くなった放置事故では母親に懲役4年の判決が言い渡されている(平成30年5月23日、山口地裁判決)。

幼い子どもは一人では生きていけない。その生死は、大人自身の手に握られているからこその、重い罰だと言えるだろう。

●故意の有無がポイントに

ただし、保護責任者遺棄致死罪に問うには、放置したことについての「故意」が必要だ。

たとえば、真夏のパチンコ駐車場であれば、死なせるつもりはなかったにしても、意図して車に放置している事実には変わりがない。そのため、離れていた時間などにもよるが、保護責任者遺棄致死罪が認められやすい。

一方、今回のケースでは、子どもを放置していたという認識が欠けているようだ。そのため、報道をベースにすれば、同罪が認められる可能性は低いと考えられる。

ただし、故意がなくても、過失致死罪(50万円以下の罰金)や重過失致死罪(5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)に問われる可能性はある。

刑事罰の有無に限らず、不注意で子どもを死なせてしまった親の後悔は察するに余りある。それだけ親の責任は重いということでもあるが、体調や環境などによってミスが起こることはありうる。親の注意を前提にしつつ、仕組みで悲劇を防ぐことも重要だろう。

たとえば、一部車種には子どもを置いたまま車両から離れると、アラートが鳴る機能がついているという。また、パチンコの駐車場では巡回などに力が入れられている。(監修:冨本和男弁護士)

プロフィール

冨本 和男
冨本 和男(とみもと かずお)弁護士 法律事務所あすか
債務整理・離婚等の一般民事事件の他刑事事件(示談交渉、保釈請求、公判弁護)も多く扱っている。

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