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選択的夫婦別姓がタブーだった自民党、なぜ保守の女性議員は「賛成」するのか
選択的夫婦別姓について勉強会が開かれた自民党「女性飛躍の会」で挨拶する稲田朋美議員(2020年3月6日、弁護士ドットコムニュース編集部撮影)

選択的夫婦別姓がタブーだった自民党、なぜ保守の女性議員は「賛成」するのか

選択的夫婦別姓の議論が深まる中、自民党の女性議員で構成する議連「女性議員飛躍の会」(室長=稲田朋美幹事長代行)は3月6日、東京・永田町の党本部で、サイボウズ・青野慶久社長や識者、当事者を招いた勉強会を開いた。

勉強会には永岡桂子・文部科学副大臣など8人の女性議員が参加。稲田議員は冒頭、「党内でも議論することすらタブー視されてきたが、女性活躍のためにもしっかり議論したい。今後は反対されている団体にもお話を聞きたい」と挨拶した。

国会の野党代表質問で1月、選択的夫婦別姓について「だったら結婚しなくていい」とヤジを飛ばした疑惑のある杉田水脈議員はこの日、出席しなかった。

●稲田議員が反対から賛成に転じたきっかけ

勉強会はメディアに非公開で行われたが、終了後に稲田議員らが取材に応じた。弁護士であり、以前は選択的夫婦別姓に反対の立場だった稲田議員は、現在は賛成している理由を語った。

「弁護士時代から歴史認識も含めて保守的な活動をしていました。結婚して姓を変えることも当然のことと思っていました。子どもを育てるにあたり、家族全員が同じ名前の方がいいと思っていました。だから、反対の立場で話したり、論文を書いたこともありました。

ただ、人生100年時代となり、生き方も多様化する中、周囲でも60歳すぎて結婚されるカップルもいて、60年使ってきた名前を変えることは自分だったら耐えられないだろうと思いました。

そこから考えて、同じように若い女性も社会的な地位を築き上げてきて、名前を変えるのは大変なことだと思いました」

また、結婚に際して96%の女性が男性の姓を選んでいる現状にも触れた。

「男性はこの問題について、考えてこなかったのではないか。女性が名前を変えて当たり前だと思ってる、自分の姓にしたいと言ったら女性のわがままだというのはフェアではないです。

私が気になっていたのは戸籍とファミリーネームのあり方でしたが、別姓でも戸籍を作れる制度があるという考えを勉強会で伺った。困っている人たち、特に女性の立場にたって、なんらかの制度を確立していくのが大事です。旧姓の通称使用もありますが、社会を混乱させる可能性があります

自民党は選択的夫婦別姓に反対してきましたが、今、若い議員たちは色々な意見を持っていますので、そうしたところから議論を活発化させていきたいです」

●慎重派議員からも「男性は自分の姓を名乗れるありがたみがわかってない」

同じく賛成の立場にある木村弥生議員は、「地元の京都でも老舗の長男長女同士が結婚する時に大変な困難があると聞いています。選択的夫婦別姓という名前ではなく、氏継承制度として考えていければ」と話した。

また、猪口邦子議員も、「研究者は結婚によって名前を変えると研究が追跡できず、多くの人が困っています。本人の意思で選択的夫婦別姓を認めるべきだというが私の考えです」と学識経験者の立場から指摘した。

また、稲田議員によると、勉強会には選択的夫婦別姓に慎重な立場である女性議員の声も聞かれたという。その1人である永岡副大臣について、稲田議員はこう語った。

「選択的夫婦別姓の前に、男性は女性が男性の姓に変えるのが当たり前であり、自分の姓を名乗れることのありがたみがわかっていない。男性も女性の姓に変えるという選択を平等に議論する状況を作ることがまず先だというご意見です。それぐらい、重い問題であることを男性にもわかってほしいということでした」

稲田議員は今後、反対する団体にもヒアリングし、議連としての意見をまとめていく考えを明らかにした。

●サイボウズ・青野社長ら当事者が法制化を要望

勉強会では、青野社長や第二次夫婦別姓訴訟の弁護団である野口俊彦弁護士が各地で行われている訴訟について説明。1996年に選択的夫婦別姓の法制化を答申した法制審議会に携わっていた小池信行弁護士(元法務省民事局参事官)が法改正への提言を行ったという。

この勉強会は、議会や議員に当事者の声を届ける活動をしている選択的夫婦別姓・全国陳情アクション(井田奈穂事務局長)が取りまとめ、最後に事実婚家庭で育った子どもたちからも制度実現の要望書を提出した。

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