インターネット上の海賊版対策として、ダウンロード(DL)違法化の拡大などについて考える文化庁の検討会(座長:土肥一史・一橋大学名誉教授)の第2回会合が12月18日、東京都内で開かれた。弁護士や研究者、漫画家など、有識者12人が議論をおこなった。文化庁はこれまでに、「軽微なもの」をダウンロード違法化の対象外とする案を出していたが、今回新たにその具体例も示された。
●「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に限定すべきか
この日の会合では、まず、ダウンロード違法化について、(1)漫画やアニメだけでなく、すべての著作物を対象とすること、(2)主観要件(違法にアップロードされたという「事実を知りながら」など)は維持すること――などがおおむね了承された。
大きな争点となったのは、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に限定すべきかどうか。
委員からは「(ユーザーの)萎縮を懸念する声が多いので導入してよい」という意見のほか、「(不当な利益を害されたことを)権利者が立証する必要がある」「海賊版対策の実効性が失われる」という声もあがった。結論は、次回(2020年1月7日)に持ち越しとなっている。
●「軽微なもの」は除外されている
前回までに、文化庁の提案した次の案については、大きな異論なく了承されている。
(1)改正案の附則に、普及啓発・教育等や運用上の配慮、施行状況のフォローアップについての規定を追加する
(2)写り込みに関する権利制限規定を拡充することで、スクショをおこなう際に違法画像等が入り込むことを適法にする
(3)「軽微なもの」を違法化対象から除外することで、数十ページで構成される漫画の1コマなど、一部分だけの軽微なダウンロードを適法にする
●「軽微なもの」の典型例とは?
文化庁はこの日、「軽微なもの」の基準・具体例(案)を示した。
1)「分量」による基準・典型例(全般)
その著作物全体の分量から見て、ダウンロードされる分量がごく小部分である場合には、「軽微なもの」と認められる
<「軽微なもの」の典型例>
・数十ページで構成される漫画の1コマ〜数コマのダウンロード
・長文で構成される論文や新聞記事などの1行〜数行のダウンロード
・数百ページで構成される小説の1ページ〜数ページのダウンロード
<「軽微なもの」とは言えない例>
・漫画の1話の半分程度のダウンロード
・4コマ漫画や1コマ漫画の1コマのダウンロード
・論文や新聞記事の半分程度のダウンロード
・絵画や写真など1枚で作品全体となるもののダウンロード(2)により「軽微なもの」と認められる場合もあり得る)
2)「画質」による基準・典型例(絵画・イラスト・写真など)
画質が低く、それ自体では鑑賞に堪えないような粗い画像をダウンロードした場合には、「軽微なもの」と認められる
<「軽微なもの」の典型例>
・サムネイル画像のダウンロード
<「軽微なもの」とは言えない例>
・絵画・イラストなどの鮮明な画像のダウンロード
・高画質の写真のダウンロード