焼き鳥店から流れ出るにおいはお客さんにとっては食欲をそそる一方、ご近所にとって「迷惑」になる場合もあります。このにおいをめぐり、観光地として知られる京都市の祇園新橋にある焼き鳥店と、地元で景観保全を行なっている「祇園新橋景観づくり協議会」が対立していると11月11日に報じられました。
京都新聞の報道によると、焼き鳥店は4月にオープン、直後から煙やにおいに対して、近隣から苦情が出ていたそうです。協議会では京都市が認定する「祇園新橋景観づくり計画書」( https://www.gion-shinbashi.jp/c/pdf/9kyoto_gion-keikakusho.pdf )に基づき、住民や店に対して騒音や悪臭などを発生させないことを求めています。
しかし、この計画書に法的な拘束力はありません。また、焼き鳥店のにおいの問題は祇園新橋だけでなく、全国各地で起きています。では、この問題をどう考えたらよいのか、法的な視点から山之内桂弁護士に解説していただきました。
●明確な法令違反があれば、営業やめさせることは可能だが…
まず、「においがひどいから」という理由で、飲食店に営業をやめさせることは可能なのでしょうか?
「明確な法令違反があれば、やめるよう求めることはできます。
たとえば、住宅系用途地域では、店舗設置の規制があります(建築基準法48条など)。また、飲食店営業には許可(食品衛生法51条など)が必要ですし、悪臭防止法や条例などの規制にしたがわなければなりません。
まずは、最寄りの保健所に通報して、調査・指導(営業中止や排気設備改善等/食品衛生法55条、56条など)をしてもらうのがよいでしょう。
しかし、行政が十分な対応をしない場合、直接交渉のほか、ADR(公害調停や民間調停)、民事調停、差止の仮処分・訴訟などの手段をとるしかありません。法令違反のない飲食店の営業を近隣住民の立場でやめさせることは難しいでしょう」
京都新聞では、焼き鳥店のオープン直後、においが原因で近隣の日本料理店が10日間、臨時休業したと伝えています。この場合、焼き鳥店に損害賠償請求は可能でしょうか?
「臭気の法令上の規制に違反するような状況があり、その違反事実の存在と休業との間の相当因果関係を主張立証できれば、請求が成り立つ可能性はあります」