LUUPなどの電動キックボードについて、近年の法改正で、ますます気軽に乗れるようになりました。その反面、痛ましい事故も起こっています。
LUUPは特殊な乗り物であるため、その交通ルールも分かりにくいと感じる人が多いと思います。
その中に、「『自転車を除く』という標識がある場合には、LUUPも自転車とともに除かれる」というものがあります。
たとえば、一方通行の標識の下に「自転車を除く」とある場合、自転車が一方通行しなくて良い、というだけでなく、「LUUPも一方通行しなくてよい」という意味になります。この標識の意味について、改めて確認してみます。
●「自転車」とは?
一般に、「自転車」といえば、自力でペダルをこぐ二輪車をイメージする方が多いと思います。LUUPが「自転車」にあたるようにはとても見えません。
なお、「原付も原動機付き『自転車』なんだから、自転車と同じに扱うのではないか?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
このような呼び名については、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」(以下、「標識令」と呼びます。)に規定があります。
標識令の中には「別表」という、標識等を図や表で示している部分があります。その中の「別表第二 補助標識 備考」というところにあります。わかりにくいです。
標識令による車両の略称(弁護士ドットコムニュース編集部作成)
この規定によると、「自転車」とは「普通自転車」のことで、普通自転車とは、「車体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する自転車で、他の車両をけん引していないもの(道交法63条の3)」等と定められています。
また、原付(一般原動機付自転車)は、「原付」という略称が定められており、交通ルールのうえでは「自転車」と区別されています。
では、LUUPは何にあたるのでしょうか?
●LUUPは「特定小型原動機付自転車」である
LUUPは、基本的には「特定小型原動機付自転車」(道路交通法2条1項第10号ロ)にあたります。
特定小型原動機付自転車とは?(警視庁HPより)
※時速6km/h以下でしか走れないモードのときには「特例特定小型原動機付自転車」となりますが、今回はややこしすぎるので割愛します。
「特定小型原動機付自転車」とは?(弁護士ドットコムニュース編集部作成)
簡単にいえば、「特定小型原動機付自転車」とは、原動機付自転車の中で、「自転車道を乗っても危険でない」もので、「運転に高い技術がいらない」と認められたもの、ということになります。
特定小型原動機付自転車は、どういうルールに従わなければならないのでしょうか?
●「自転車を除く」という標識にLUUPもしたがう
矢印が描かれた「一方通行」の標識を「本標識」、その下にある「自転車を除く」という標識を「補助標識」といいます。
一方通行を表す青い矢印が「本標識」、「自転車を除く」部分が「補助標識」(夏夫 / PIXTA)
このような標識の内容については、前述の「標識令」によって詳しく定められています。
「別表第1」の「備考3」により、「自転車が規制対象となる場合には、特定小型原動機付自転車も規制対象となる」「自転車が規制対象外となる場合には、特定小型原動機付自転車も規制対象とならない」とされています。
したがって、「自転車を除く」場合には、LUUPも「除く」ことになります。
標識令別表 第1 備考3(弁護士ドットコムニュース編集部作成
●まとめ
これまでみてきたように、LUUPは「自転車」ではなく、「特定小型原動機付自転車」です。しかし、補助標識との関係で「自転車」と同じように扱われることがあります。
ただし、これはあくまでも補助標識との関係にすぎません。LUUPは常に自転車と同じ交通ルールに従えば良いというわけではなく、場面ごとに法令を確認する必要があります。
今回扱った「自転車を除く」という標識(補助標識)がある場合に、「LUUP」が除かれるのか?という点については、答えだけであれば、少し調べればネット上で探すことができます。
警察署も含めた多くの解説サイトの中で、「自転車を除く」という標識の場合、特定小型原動機付自転車も除かれることとなるという記載があります。
しかし、「なぜLUUPが自転車に含まれるのか?」について、条文を示した上できちんと解説しているサイトは、Luup社のサイトを含め、私が探した限りでは1つもありませんでした。
そして、実際に条文の根拠を探してみると、弁護士資格を持つ私のような人間が探しても、かなり骨が折れる作業だということが分かりました。
これでは、一般の人がLUUPのルールを正しく知って安全に乗ったり、町中でLUUPを見かけた人が、その運転に正しく対応するのは難しいのではないか、と感じます。
LUUPのような新しい乗り物は、正しく使うことができればとても便利で、人々の生活をよりよくするものだと思います。
しかし、新しいこともあってルールがわかりにくく、危険な乗り方をしているケースも多く見受けられます。
マナーについて注意喚起することも大切ですが、こういったルールを、誰にでも分かるようにして、安全に乗れるようにしていくことが必要だと感じました。
(弁護士ドットコムニュース編集部・弁護士・小倉匡洋)