シカと衝突――。今年はクマによる被害が注目されましたが、野生動物が自動車や鉄道と衝突する事故も増えています。たとえば、北海道のエゾシカです。
北海道警によると、2022年に発生したエゾシカにからむ交通事故は、4480件で、2004年に調査を開始して以来、過去最多となっています。
実際に衝突すれば、双方に大きな被害が発生します。弁護士ドットコムの公式LINEに寄せられた体験談から、エゾシカのエピソードを紹介したいと思います。
⚫️対向車線を向かってくるエゾシカの群れ
「生きた心地がしませんでした」
そう振り返るのは、北海道在住の女性(50代)です。10年ほど前の秋の夜、勤め先から帰宅中にエゾシカの群れと遭遇したといいます。
自動車を運転していた女性は、対向車線から、エゾシカ3頭が女性のほうに向かってくるのが見え、あわてて停車したそうです。
「車中なのに、通りから振動が伝わってきました。真っ暗な中、シカたちの目が赤く光り、とにかく刺激しないように横を通り抜けるのを待ちました」
エゾシカは、最大で体長190センチ、体重150キロとなり、衝突すれば生死に関わります。
北海道では、エゾシカに絡む交通事故が過去最多を更新していますが、2022年には、シカを避けようとしてガードロープに衝突したことなどが原因による死亡事故が2件もありました。
車体への被害も大きいです。日本損害保険協会北海道支部は、エゾシカとの衝突事故が増える10月〜11月に毎年、事故による車両保険支払い状況を調べています。
調査によると、2022年10月〜11月は約1000件で、支払い保険金額は約6億円となっています。2016年以降、支払い規模は大幅に増加しています。
国交省北海道開発局では「エゾシカ衝突事故マップ」を作成し、衝突防止のために、早朝や夕方の飛び出した多いことや、1頭目が出たら2頭目、3頭目も飛び出してくることなどに注意して、スピードダウンして運転するよう呼びかけています。
⚫️エゾシカと列車の事故は過去最多を更新
自動車事故だけでなく、鉄道との衝突も深刻です。
「電車とシカが衝突すると、学校や職場に遅れてしまうので大変です。ぶつかってしまったシカもかわいそうではあるのですが…」
北海道の北部に住む女性(50代)はそう話します。
鉄を求めてシカがレールを舐めに来るから。北海道でシカの列車事故が多発している原因を、そのようにまことしやかに言う方がいる。極寒の地でレールを濡れた舌で舐めたらどうなる?冬の道内ではそれがシカが線路に近付く主な原因では無い。除雪され雪が締まった線路周辺を通り道として多用しているのだ pic.twitter.com/n2FZip2wni
— 猛禽類医学研究所 齊藤慶輔 (@raptor_biomed) February 10, 2023
JR北海道によると、年々増加傾向にあるエゾシカと列車の事故は、2022年には2881件と過去最多となりました。JR北海道では、特に影響の大きな区間で、沿線にエゾシカの侵入を防ぐ冊を設置していますが、完全に防ぐことはできないとのことです。
また、北海道ではエゾシカによる人間社会への被害が深刻化していることから、2014年に「北海道エゾシカ対策推進条例」を制定し、個体数の管理などさまざまな対策を進めています。