プロ格闘家の朝倉未来さんが3月2日、自身のYouTubeチャンネル「ふわっとmikuruチャンネル」で、高級スポーツカーを運転していた際に当て逃げ被害にあったことを明らかにした。
朝倉さんは1週間くらい前、フェラーリの車に乗って朝食を食べに築地へ向かった際、目的地近くの左折車線で信号待ちをしていたところ、横の直進車線に来た大型トラックが自車のサイドミラーに「ガガッと当たった」と事故状況を説明。トラックの運転手は「おじいちゃん」だったという。
トラックの運転手は慌てて車を降りてきたものの、「(車のギアを)パーキングに入れてなくて、トラックが後ろに下がり始めた」ため、運転席に戻ってしまったようだ。
そのタイミングで信号が青になったため、朝倉さんは後続車を気にして一旦左折。曲がって少し進んだところでミラーの状況などを確認しようとしていたら、トラックは直進車線を「さーっと行っちゃった」という。
慌てて去っていった様子を見た朝倉さんは、「すっごいかわいそうに見えちゃって。いっか、ってなっちゃったな」とその時の心境を話し、ぶつかった車のミラーも「ちょっと傷ついたくらい」だったため、そのまま見逃したという。
トラックの運転手について、朝倉さんが「本当は警察にも言わないといけないからね」と話した際、スタッフと思われる男性から「向こう(トラックの運転手)がでしょ」と言われると、「俺止まってたもん」と返答。どうやら被害を受けた朝倉さんからは警察に通報しなかったようだ。
幸い怪我をした人はいなかったようだが、車同士がぶつかった以上は交通事故には違いない。朝倉さんやトラックの運転手が実際に警察に通報したか否かは明らかでないが、交通事故があった際、被害者側が問題視しなければ、警察へ通報しなくてもよいのだろうか。伊藤諭弁護士に聞いた。
●警察へ報告しなかった被害者を待ち受けるペナルティ
——交通事故の当事者にはどんな義務が課されていますか。
交通事故が発生したとき、交通事故の当事者である車両の運転者は、(1)直ちに車両等の運転を停止して、(2)負傷者を救護し、(3)道路における危険を防止する等必要な措置を講じなければならない義務があります。
その上で、当該車両等の運転者は、警察官に当該交通事故が発生した日時及び場所、当該交通事故における死傷者の数及び負傷者の負傷の程度並びに損壊した物及びその損壊の程度、当該交通事故に係る車両等の積載物並びに当該交通事故について講じた措置を報告しなければならないとされています(道路交通法72条1項)。
——被害者にも報告する義務はあるのでしょうか。
ここでいう「運転者」とは、発生した交通事故における過失の有無を問いませんので、加害者だけでなく被害者である車両の運転者ももちろん含みます。
警察への報告を怠った場合、3か月以下の懲役か5万円以下の罰金という罰則もあります(報告義務違反のみの場合。道交法119条1項10号)。
また、報告義務違反自体による違反点数の加算はありませんが、状況によっては危険防止等措置義務違反による「5点」、安全運転義務違反による「2点」の合計「7点」が加算される可能性があり、違反歴がなくとも一発で免許停止になってしまいます。
——警察に報告をしないことによる問題点は義務違反以外にもありますか。
まずは、交通事故証明書が発行されないことです。交通事故証明書が発行されないと、事故の発生自体の証明が難しくなります。その結果、相手方に対する損害賠償請求が困難になったり、車両保険等の請求ができないことがあるなどの不利益があります。
警察に通報することを「おおごと」として捉え、躊躇してしまうという気持ちも分からないではありません。もちろん、朝倉さんのケースで実際に罰則が科せられるとは限りませんが、報告をすることは被害を受けた本人の利益のためでもありますので、交通事故の報告は必ずしていただきたいと思います。