小さな集落にUターンしてきた男性がのけ者にされた――。大分県弁護士会は11月6日、そのような状況は人権侵害にあたると判断して、自治会に対して是正勧告をおこなったことを発表した。同弁護士会は「農村部に残る明らかな村八分事案だ」との見解を示している。
●補助金の分配方法について疑問を呈したところ・・・
大分県弁護士会などによると、この男性が「村八分」にされた経緯は次のようなものだ。
男性は親の介護のために2009年、関西地方から大分県北部にある市にUターンして就農した。その後、農地や水路整備のために農水省から交付される補助金の分配方法について疑問を呈して、市役所などに問い合わせたという。
こうした行動がきっかけとなり、男性の世帯は、自治会から「構成員でない」とされた。さらに、農業用水路の管理や豊作祈願の行事について知らせてもらえなかったり、市報を配布してもらえないなど、集落で生活するにはあまりにも影響が大きい「村八分」にされた。
●さしたる落ち度もなく、一方的にのけ者にされている
男性の申し立てを受けて、大分県弁護士会・人権擁護委員会が調査・照会したが、集落側が態度を変えなかったため、今回の是正勧告に至ったという。同弁護士会は「男性にはさしたる落ち度もなく、一方的にのけ者にされている」と指摘している。
同人権擁護委員会によると、大分県内で「村八分」をめぐって是正勧告をおこなったのは、今回で3回目(自治会に対しては2例目)。同委員長の松尾康利弁護士によると、都会からUターンしてきた人は権利意識が高いため、地元の人とトラブルになるケースがあるという。
もし、今回の男性のように「村八分」にあったら、裁判所に訴えるべきなのだろうか。松尾弁護士は「どうしても金銭的な解決をとりたいならば別ですが、一般論として、あまり裁判になじまないケースです。勝っても、負けても、仲間に入れてもらえなかったら意味がないからです」と述べていた。
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