あるアンケート調査によると、日本では2012年時点で推計約2130万頭の犬・猫が飼育されているようだ。その一方、環境省によると、飼い主に捨てられたり、はぐれたりしたことが原因で自治体に引き取られた犬・猫の数は年間23万頭に及んでおり、うち8割近くが殺処分されているという(2011年度)。
今年7月には、18匹の猫がプラスチックの衣装ケースに入れた状態で捨てられ、うち6匹が死ぬという痛ましい事件が報道され、話題を呼んだ。
こうした事態を改善するため、今年9月には「改正動物愛護法」が施行され、合わせて「動物愛護管理基本指針」も改訂された。これらの法律・指針は、ペットを捨てる行為にどんな歯止めをかけているのだろうか。場合によっては飼い主が処罰されることもあるのだろうか。ペットにまつわる法律問題にくわしい細川敦史弁護士に聞いた。
●ペットを捨てると「100万円以下の罰金」に
「犬や猫、うさぎなどの愛護動物を遺棄する行為は、従来から刑罰で禁止されていましたが、心ない飼い主や悪質なペット業者による動物の遺棄は、後を絶ちませんでした。
そういった事情もあり、今回、法定刑が2倍に引き上げられ、『100万円以下の罰金』となりました」
――これで「捨てられるペット」は減る?
「まだわかりません。法定刑が重くなっても、適切な捜査・検挙がなければ絵に描いた餅となるからです。
動物の遺棄・虐待事件についてはこれまで、警察でも『なかなか取りあってもらえなかった』という声を聞いています」
●欧米には「アニマルポリス」と呼ばれる組織がある
――その点についても、動きがある?
「そうですね。今回の改正では、警察と動物担当部局の連携強化について、国が必要な施策を講じることが明記されました。
将来的には動物事件を専門的に取り扱う部署の創設が期待されるところです。欧米では、形態は様々ですが『アニマルポリス』と呼ばれる組織があったり、専門の警察官がいたりします」
●自治体側で「引き取り拒否」が可能に
――自治体に持ち込まれ、「処分」されるペットは減る?
「その点についても、対策が打たれています。山や公園などに捨てる以外にも、犬猫を保健所等の自治体施設に持ち込んで『捨てる』人が多くいるからです。年間で殺処分される犬猫は約17.4万頭に及びます(2011年度環境省統計)。
これまで、保健所は所有者からの引取りを拒めず、安易な飼育放棄やペット業者の売れ残りも引き取らざるを得ませんでした。しかし今回の改正で、このような引取り要求については、拒否できるようになりました」
――今回の法改正をどう捉える?
「今回の法改正では、ペットの所有者に『できる限り終生飼育する』という努力義務がある点も新たに明記されました。
ペットの飼い主や業者は、動物を『命あるもの』として扱うべきことが、法律上これまで以上に明確となった点で意義があったと言えるでしょう」