「17歳の息子が、体に刺青を入れていました・・・」。ある少年の母親から、弁護士ドットコムの法律相談コーナーに投稿が寄せられた。母親は「刺青の除去費用を、彫った人に負担させられないでしょうか」と相談している。
母親は、将来を考えて「刺青を消してほしい」と願っており、息子もそれに同意しているようだ。しかし、刺青の除去費用は高額で、「母子家庭の私には、払いきれる額ではない」という。そこで、刺青を除去する費用を「少しでも相手方に請求したい」と考えているそうだ。
というのも、彫った人物は、母親と顔見知りで、息子の年齢も知っていたはずだからだ。また、「息子が一番悪いのはわかってはいるのですが、大人として、一言でも私に『息子さんが刺青を入れたがっている』と相談してくれていたら・・・」と、相手を責める気持ちもある。
女性の願いは認められるのだろうか?一藤剛志弁護士に聞いた。
●18歳未満の少年に刺青を彫るのは「違法」
「刺青を彫る行為は、業として、つまり、反復継続の意思をもって行う場合は『医業』にあたり、医師でなければ行うことができません(医師法17条)。しかし一般に、彫り師が医師免許を持っていることは、ほとんどないと言われています。
また、18歳未満の青少年に対して刺青を彫ることは、各地の『青少年保護育成条例』で禁じられています。こちらは特に『業として』との制限はなく、一回だけ施術した場合でも、違法となります」
一藤弁護士はこのように説明する。今回のケースも違法行為となるのだろうか。
「ご相談のケースでは、刺青を彫った人物は、おそらく医師免許を持っていないでしょうし、そもそも少年が17歳だと知っていたということですから、いずれにしても、少年に刺青を彫った行為は違法となります。
このことから、少年(その法定代理人として母親)は刺青を彫った相手に対し、不法行為に基づく損害賠償を請求できると考えられます」
では、刺青の除去費用も請求できるのだろうか。
「はい。損害の内容には『刺青の除去費用』も含まれるといえるので、その費用も相手方に請求できるでしょう。
もっとも、刺青は少年自身の了解のうえで彫られたものですので、少年にも落ち度があったとして、一定程度の過失相殺がなされると思われます」