4月15日に東京地裁(田辺三保子裁判長)で開かれた「ろくでなし子」こと漫画家・芸術家の五十嵐恵被告人の初公判。女性器をかたどり、さまざまなデコレーションを加えた「デコまん」という作品3点が検察側から証拠として提出されたが、傍聴席からは全く見えない状態だった。
弁護団によると、初公判で示された3点の「デコまん」は、縦横50~60センチ・深さ20~30センチの木箱に入れられていた。木箱は証言台の前方に置かれたため、関係者席からでものぞき込まないと中が見えない状態で、傍聴席からだと全く中が見えなかったという。
なお、3点の作品のうち1つは、「スイーツまん」と名付けられている作品で、かたどった女性器をチョコレート色に彩色して、砂糖菓子のようなデコレーションをしたもの。他の2つは「青色」と「白と黒のゼブラカラー」の作品だという。
●「裁判の公開」原則に反しないか
弁護団の山口貴士弁護士は、初公判後に開いた記者会見で、「証拠は傍聴人に示す必要はないとされていますが、ことさらに傍聴人から隠すようなような形で調べるのは、裁判の公開原則に反し問題だと考えられています」と指摘した。
さらに、こうした形での証拠調べを裁判所が許したことは、「裁判官の予断排除」という側面からも問題だとして、次のように述べた。
「検察側の前提からすれば、『わいせつで傍聴人にも見せるべきではないから、見せない形で審理をしろ』ということでしょう。しかし、裁判所がその話に乗ってしまったら、裁判所自身が『これは人に見せるべきではない』――つまり『わいせつだ』という、予断と偏見を持って裁判をしていることにならないでしょうか。
初公判前に、裁判官の手元にあるのは、起訴状一枚だけです。つまり、どんなものが木箱の中に入っていて、どんなものがこれから示されるのか、裁判官はこれから初めてみるものなのです。それなのに、検察官の言うがまま、隠した形でやりましょうというのは、訴訟指揮としてフェアではないなと思いました」
●「なぜ通常と違うやり方をするのか」検察は質問に答えず
このような形での証拠調べについては、初公判の場でも、弁護団の森本憲司郎弁護士が「ことさらにわざと見せないようにしているということで、間違いないか」と検察官に質問。山口弁護士も「なぜ通常と違うやり方をするのだ」と理由を聞いたが、検察官は答えなかったという。弁護団が異議を申し立てたため、裁判官たちは約15分間合議したが、結論としては、そのままの形で証拠調べが行われたという。
弁護団の歌門彩弁護士は「憲法82条2項では、憲法上の人権が問題となった裁判の公判は、公開しなければならないと定められています」と指摘。森本弁護士は「我々としては『訴訟手続きに重大な違法があった』と考えています。万が一、上訴することになったら、ここも論点になるでしょう」と話していた。
【動画】マンガ家・芸術家「ろくでなし子」 初公判後の記者会見
https://www.youtube.com/watch?v=YTejyEOcVGk