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<ろくでなし子初公判>繰り返してきた「まんこ」発言、「女性器」に言い換えたワケ
初公判後、記者会見で語るろくでなし子さん

<ろくでなし子初公判>繰り返してきた「まんこ」発言、「女性器」に言い換えたワケ

「わいせつなデータ」を不特定多数に送信したなどとして、わいせつ電磁的記録送信やわいせつ物等頒布などの罪で逮捕・起訴されたマンガ家・芸術家「ろくでなし子」こと五十嵐恵被告人(43)の初公判が4月15日、東京地裁(田辺三保子裁判長)で開かれた。

ろくでなし子さんは法廷での意見陳述で、「女性器のデータや女性器を元にしたわたしのアート作品は『わいせつ』ではありませんので、わたしは無罪です」と主張した。

●意見陳述で「まんこ」を使ったのは一度だけ

この日の意見陳述では、これまでの主張で繰り返してきた「まんこ」という言葉を、ろくでなし子さんは一度しか使わなかった。その理由を、初公判後に都内で開いた記者会見で次のように説明した。

「これまで繰り返し主張してきたことですから、本来なら言葉を、言い換えたくはなかったんですが、あまりにもその言葉ばかりを使ってしまうと、この人は単にその言葉を言いたいだけの変な人だと裁判官に思われかねないと考えて、私なりに丁寧に工夫をしてお話ししました」

弁護団の山口貴士弁護士は、「今回の裁判は、まんこという言葉がわいせつだからといって、裁かれているわけではありません。直接争点ではないところで、無駄に場外乱闘をしてもしょうがない。ただし、創作動機を語るうえで、なぜその言葉が使えないかということは重要なポイントなので、必要最小限度においては言わざるを得なかった。裁判官に、本質の部分を見て判断してほしいということです」と補足した。

●「どうやって裁判官に『たやすい道』を選ばせないようにするか」

ろくでなし子さんは2013年~14年にかけて、ネットで寄付を呼びかけて女性器をモチーフにしたボートを作成した際、寄付した人たちに、自らの女性器をスキャンして作った「3Dプリンタ用データ」をネット経由やCD-Rを郵送して配った。また、女性器をかたどりデコレーションを加えた「デコまん」という作品を、都内の女性向けアダルトグッズショップで展示。これらデータ・作品が「わいせつ」だとして、検察に起訴された。

こうしたわいせつ物等頒布の罪は、刑法175条に定められているものだが、弁護団はまず(1)刑法175条の合憲性を争い、さらに(2)刑法175条が合憲だとしても、今回のデータや作品が「わいせつ」にはあたらないと主張していくという。

記者から裁判の見通しについて問われると、山口弁護士は「ろくでなし子さんのデータや作品は、性欲を興奮・刺激するようなコンテクストは全くない作品です。現在流通している性表現物に比べて、著しく性欲を刺激するようなものだとは思えません」と主張した。

さらに、「メイプルソープ裁判」で男性器が写った写真集が「わいせつではない」とされたことや、週刊誌で女性器アートの特集が組まれたり、インターネットを通じて世界のボディアート表現にアクセスできる状況になっていることなどを指摘。「そうした時代の変化をこちらがきちんと論証して、裁判官が虚心坦懐に耳を傾けてもらえれば、作品がわいせつだという判断はしにくいと考えています」と話した。

それでは、裁判官もそう考えてくれるのか。

山口弁護士は「『わいせつかどうか』は法解釈の問題なので、裁判官が『性器が見えているからわいせつに決まっている』として、そういう判決を書くことはいともたやすいことです。どうやって裁判官に『たやすい道』を選ばせないようにするのか、どうやってそのための環境作りをしていくのかが、本件の弁護活動のキモだと考えています」と話していた。

次回期日は5月11日に予定されている。

【動画】マンガ家・芸術家「ろくでなし子」 初公判後の記者会見

https://www.youtube.com/watch?v=YTejyEOcVGk

(弁護士ドットコムニュース)

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