インターネットのSNSや高級マンションのパン教室などを通じて知り合った女性経営者から「リスクの低い投資」と勧誘を受けて出資したのに、配当が停止され返金もないとして、出資者16人が裁判を起こし、計約1億2000万円の損害賠償を求めていた。その訴訟で、東京地裁(永谷典雄裁判長)は3月26日、投資話が「出資者に対する詐欺行為」だったとして、原告の請求をそのまま認める判決を下した。
●汐留の高級マンションでパン教室
判決によると、原告たち16人は2009年以降、SNSや東京・汐留の高級マンションで開催されたパン教室などを通じて女性経営者と知り合い、出資を呼びかけられた。
女性経営者は「リスクは低い」などとして原告たちを説得。出資の際に、原告たちが受けた説明内容について、「出資金が専門的な判断のもと、複数の運用会社に分散されて投資されているため、リスクは低く限定的である一方、高率の配当金が得られると信じ込ませるものだった」と、判決は認定している。
ところが判決によると、実際に女性経営者がやったことは、原告たちから集めたお金を、ほぼそのまま他の被告が経営する「エターナルファンド」という1社に貸し付けただけだった。
さらに、エターナルファンドが行った運用とは「FX取引」だけだった。エターナルファンドは、複数の「子ファンド」から集めた約16億円の大部分をFX取引につぎ込み、約2億5000万円の損失を出した。そして、出資金のうち9億4400万円は、出資者らに払う「配当金」として拠出した。なお、残りの約4億円は使途不明になっている。
判決は結論として、被告たちの投資話は「当初から破たんすることが必至」で、「金融商品として不適正」だったと認定。さらに、被告たちの行為は「詐欺行為に当たり、不法行為」だとして、原告たちの請求をそのまま認めた。
さらには、原告たちは「社会の倫理、道徳に反する醜悪な行為」の被害者だとして、原告たちが被告側から受け取っていた「配当金」の分について返還しなくてもよいとした。
●「豪華な場所で話をするようにしろ」
判決は、こうした一連の詐欺の首謀者が「会長」とよばれる40代の男性だったと認定している。「会長」は、自分の「弟子」が代表取締役をつとめるエターナルファンドの「子ファンド」を、内縁の妻である女性経営者や知人に運営させていた。
「会長」は、その「子ファンド」の運営者の一人に対して、次のような言葉で、出資者の勧誘方法を指南していたという。
「自分が裕福だと思わせろ」
「豪華な場所で話をするようにしろ」
「今までにあったことのない人だと思わせろ」
「頭のいい人間はダメ、世間知らずの独身婚活女などがいい。金を貯め込んでいるから」
「子どもの将来とか、親の介護、自分の将来の不安をあおれ」
「ネットを駆使しろ」
「どれだけいいことがあるかブログを書いたらいい」
原告らは、こうして作りだされた「セレブな雰囲気」のなか、出資を持ちかけられたわけだ。
原告代理人の荒井哲朗弁護士は「裁判では、セレブな雰囲気を利用する被告の『手口』をほぼ解明し、出資話がデタラメだったと示せた。それが、原告側の主張を全面的に認めてもらえた判決につながった。原告たちの被害回復をはかるため、なんとか賠償金を回収したい」と話していた。