福岡県内の20代男性が1月中旬、公立大学法人福岡女子大学を相手取り、福岡地裁に裁判を起こした。男性であることを理由に、女子大への入学を認めないのは「性別による差別」で憲法違反だとして、入学願書不受理の取り消しや約66万円の損害賠償を求めている。
訴状などによると、福岡県内で管理栄養士の受験資格を取得できる国公立大学は福岡女子大だけだったため、男性は昨年と一昨年、同大の国際文理学部「食・健康学科」の社会人特別入試に出願した。ところが、女性の入学しか認めていないという理由で、受理されなかった。
今回の訴訟にどんな意義があるのだろうか。男性の代理人をつとめる作花知志弁護士に聞いた。
●男女間の「是正措置」は今も必要なのか?
「公立大学は、主に地方公共団体からの拠出、つまり税金によって運営されており、公的な教育を担っています。そのような公立大学が、女性だけの入学を認めて、男性は受験すら認めないと区別することは、次の2点で問題となります。
(1)憲法14条が禁止する『性別による差別』に当たらないか
(2)憲法26条が『平等に教育を受ける権利』を認めていることに違反しないか」
作花弁護士はさらに、女子大の歴史的な役割について説明する。
「歴史的に見て、女性は男性に比べて、『教育を受ける権利』を十分に保障されてきませんでした。女子大の存在理由は長らく、こうした男女間の格差を是正することとされてきました」
このような是正措置のことを『アファーマティブ・アクション(積極的是正措置)』という。女性や障害者などが弱者とされ、実質的な不平等が起きている場合にとられる措置だ。
「しかし、時代が進むにつれて、不平等が改善されて、その是正措置がいまも社会に必要なのか、問われる時期がやってきます。
たとえば、現在の日本では、男性と女性の大学進学率は、短大を含めるとほとんど同じになっています。つまり、女子大の存在理由が揺らいでいると言っても、過言ではないのです」
このように述べたうえで、作花弁護士は今回の訴訟の意義を次のように強調していた。
「是正措置を受けることができない人、今回のケースでいうと男性の側からみたら、『逆差別』になるのではないか、という重要な問題を提起する訴訟になります」