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タクシーで財布を拾って「自分の物」に――思い直して届ければOKか?

タクシーで財布を拾って「自分の物」に――思い直して届ければOKか?

お笑いコンビ「品川庄司」の品川祐さんがタクシーに財布を置き忘れ、何者かに持ち去られてしまったことが3月12日、明らかになった。財布の中には現金18万円のほかに結婚指輪も入っていたという。その後、六本木の路上で、財布の中に入っていたクレジットカードなどが見つかっており、品川さんのあとに乗った客が財布を持ち去ったとみられている。

タクシーに乗ったら座席に財布があった場合、それは他人の「落し物」である可能性が大きいが、そのような落し物をタクシーの運転手に報告しないで「自分の物」にしてしまった場合、罪になるのだろうか。

また、いったん自分の懐に入れかけたとしても、そのあとで思い直し、タクシー会社や警察に届けるケースも考えられる。そのような場合は、どうなるのだろうか。大和幸四郎弁護士に聞いた。

●タクシーの落し物を勝手に持ち去ると「遺失物横領罪」になる

道路に落ちている財布を拾って自分のものにしてしまった場合は、「占有を離れた他人の者を横領した」(刑法254条)として、遺失物横領罪となる。タクシーの落し物も同じようにみえるが、大和弁護士は以下のように説明する。

「落とし物は、他人の意思に基づかずその占有を離れ、誰の占有にも属していない物といえ、『遺失物』にあたります。そのため、落とし物(他人の財布)を勝手に持ち去った場合は、遺失物横領罪(刑法254条)が成立することになります」

では、他人の財布を自分の懐に入れかけて、途中で思い直した場合はどうなのか。

「いったん自分の懐に入れてしまうと、他人の占有を侵害したといえるので、遺失物横領罪の『既遂』になってしまいます。したがって、あとで思い直したとしても、遺失物横領罪が成立します。これに対して、財布を入れかけたところで思い直し、運転手さんに『財布が落ちていました』と渡した場合は『未遂』となります。この点、遺失物横領罪は未遂処罰規定がありません。よって、この場合は、無罪となります」

つまり、自分の懐に入れてしまったときは、犯罪となってしまうというのだ。そこで、大和弁護士も「財布をタクシーで見つけた場合は、すぐに運転手さんに渡すか、思い直して運転手さんに届けるのが無難だと思います」とアドバイスしている。

(弁護士ドットコムニュース)

プロフィール

大和 幸四郎
大和 幸四郎(やまと こうしろう)弁護士 武雄法律事務所
佐賀県弁護士会。2010年4月~2012年3月、佐賀県弁護士会・元消費者問題対策委員会委員長。元佐賀大学客員教授。法律研究者、人権活動家。借金問題、相続・刑事・男女問題など実績多数。

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