自衛官らへのいじめ、パワハラ、セクハラなどの人権侵害に対して幅広い救済をするため、全国の弁護士20人超が実態調査に乗り出す。
2022年に元陸上自衛官の五ノ井里奈さんが性暴力を実名で告発したことをきっかけに、防衛省が全隊員を対象とする特別防衛監察を実施。セクハラなど1414件の申し出があり、2023年8月に有識者会議が提言を提出した。
しかし、陸海空の複数の訴訟を抱える8つの弁護団は、国の調査は不十分でリアルな声を反映していないと指摘。「自衛官の人権弁護団・全国ネットワ-ク」を結成し、11月1日〜12月31日にアンケート調査を行うことを決めた。
東京都内で会見した佐藤博文弁護士は「大半の被害者は(16ある階級で最下層の)士以下で、加害者は上司です。命令と服従という関係のなかで、声を上げにくい。可視化するためには第三者が調査すべき」と訴えた。
●「自死との関係や男性の被害も明らかにすべき」
佐藤弁護士は、11人で組織する「自衛官の人権弁護団・北海道」の代表を務め、五ノ井さんの事件以前から自衛官の問題に取り組んでいる。
「“駆け込み寺”としてやってきて、今回が新たな動きなのは間違いありません。しかし、国の報告を見ると、根絶に向けた重要な一歩にはならないと思った。各部隊に相談があったとブーメラン的に戻ってくれば、『誰がチクったのか』となる。申告が少ない原因です」
これまでの相談内容などから、男性間の暴力や自死との関係なども調査するべきだとし、被害者本人だけでなく、同僚や家族など関係者用のアンケートも準備した。