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名物「一尺エビフライ」注文したら…客「30センチじゃなくて21センチだった」 店の見解は?
写真はイメージです。記事に出てくる店とは関係ありません(dejavu / PIXTA)

名物「一尺エビフライ」注文したら…客「30センチじゃなくて21センチだった」 店の見解は?

注文したメニューと実際に運ばれてきた料理が違う。誰でもこのような出来事を一度は体験したことがあるのではないだろうか。

洋食店で「エビフライ」を頼んだという人から、弁護士ドットコムニュースのLINEに体験談が寄せられた。

「一尺エビフライ」を注文したところ、1尺(約30センチ)に足らないサイズのものが提供されたという。減額や作り直しを求めることができるのだろうか。店に考えを聞いた。

⚫︎お昼に入った洋食店のエビフライが…

編集部に連絡をくれたAさんは昨年、ランチタイムに入った洋食店でメニューに記載のあった『一尺エビフライ』という名前の食べ物を注文したという。

約30センチ(=1尺)のエビフライを期待していたが、「出てきたのは21センチほど(=7寸)」だったそうだ。

「モヤモヤしましたが、そのまま会計しました。注文と商品が違うと主張して、注文の取り消し、または料理は提供してもらった上で減額を要求することはできたのでしょうか?」(Aさん)

指摘のあった洋食店は、地元メディアでも取り上げられる愛知県名古屋市の人気店「広小路キッチンマツヤ」だ。相談内容について聞いてみると、代表から丁寧な回答が返ってきた。

——お店では「一尺エビフライ」を注文して、1尺(約30センチ)より小さい21センチほどのエビフライが提供されることはありますか

悪意をもって提供することは決してありませんが、以下の理由で提供してしまったものと思われます。

この料理は通常サイズのエビ5尾を用いて、弊社独自の技術(以前は製法特許を取得しておりました)で繋げたものです。「結着エビ」と呼ばれるもので、この技法自体は古くからあるものです。

これを1つずつ手作りしており、その際に尾びれまでを含む全長で一尺とするように繋げるのですが、まれに長さが不足していることがあり、これをチェックして省く過程で漏れが生じたものと考えられます。

さらに申せば、長さに多少の不足が生じても用いるエビの数は変わらないことから、名づけておきながら長さの部分において怠りがあった面は否めず、反省しております。

——減額や注文の取り消しには応じてくれるものでしょうか

この料理に限らず、その場でご指摘いただければ新たに調理・提供し直しますし、減額や取り消しを希望された場合にも対応しております。後々になってのご指摘で返金を求められるようでしたら、可能な限り対応致します。

⚫︎法的に「注文取り消しできる」とはいえ…

メニューと実際の料理が異なっていた場合、店はどこまで客のもとめに応じる必要があるのだろうか。

自身も飲食店を手がけ、飲食業界のトラブルにくわしい石崎冬貴弁護士は次のように指摘する。

「商品名と実態がかけ離れている場合、客側としては、法律上、注文を取り消したり、減額を求めることも可能です。

繰り返されるようであれば、景品表示法違反で行政処分を受ける可能性もあります。しかし、現実問題として、飲食店で一品一品まったく同じ形状の料理を作ることはできませんし、客側もそれをわかっているはずです。

電子機器や家具は寸法通りでなければ大変ですが、『一尺エビフライ』は『ちょうど一尺のエビフライ』というより、『一尺くらい大きなエビフライ』であると認識するのが普通でしょう。

もちろん、今回のご相談のように、『一尺エビフライ』が20センチであれば、客側が納得できない気持ちもわかります。

店側は、メニューから想像するイメージに沿う料理を作るように努めるべきですし、客側はもし実物が違ったと思うのであれば、どこがどうイメージと違ったのか、具体的に指摘して説明すべきでしょう。特に、証明が困難になるので、事後的な主張などは避けるべきです」(石崎弁護士)

プロフィール

石崎 冬貴
石崎 冬貴(いしざき ふゆき)弁護士 法律事務所フードロイヤーズ
東京弁護士会所属。一般社団法人フードビジネスロイヤーズ協会代表理事。自身でも焼肉店(新丸子「ホルモンマニア」)を経営しながら、飲食業界の法律問題を専門的に取り扱い、食品業界や飲食店を中心に顧問業務を行っている。著書に「なぜ、一年で飲食店はつぶれるのか」「飲食店の危機管理【対策マニュアル】BOOK」(いずれも旭屋出版)「飲食店経営のトラブル相談Q&A―基礎知識から具体的解決策まで」(民事法研究会)などがある。

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