子どものわいせつな写真などの所持を禁じる改正児童ポルノ禁止法が6月18日、参院本会議で与野党の賛成多数で成立した。改正法では、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持した場合、1年以下の懲役、または100万円以下の罰金が科されることになった。
その一方で、7月に予定される法施行の前から児童ポルノを所持している人に、自主的な「廃棄」をうながすため、1年間の「猶予期間」を設けて、その間は罰則を適用しないと定めている。
法改正をめぐっては、さまざまな観点からの議論がなされてきたが、特に、現在持っている児童ポルノを猶予期間内にどう「廃棄」するのかが、大きな問題となりそうだ。今後の見通しについて、奥村徹弁護士に聞いた。
●「児童ポルノ」を捨てたことを「証明」できないと危ない?
もし、パソコンなどに保存していた児童ポルノを削除せずに残したままにしておいた場合、逮捕される可能性があるのだろうか。奥村弁護士はこう説明する。
「児童ポルノを持っているのであれば、逮捕されても仕方ないということになります。捜査は、法施行以前の購入リストに基づいて行われることもありえます。もし過去に購入した児童ポルノの画像や映像を、パソコンのハードディスクなどに保存していれば、所持していないと弁解することは難しいでしょう」
では、児童ポルノを所持している場合、1年間の「猶予期間」内に捨ててしまえば、問題はないのだろうか。
「単に捨てればいいというわけではなく、捨てたことを証明できないとダメ、ということになるでしょうね。最寄りの警察署に行って、いつ捨てたのかを伝えないと、『まだ持っているのではないか』と疑われる可能性があります」
さらに、奥村弁護士は、児童ポルノの所持を禁止した奈良県の条例を引き合いに出して説明する。
「奈良県の条例の場合、児童ポルノを持参して自首すれば、罪が免除されることになっています。このような運用がないと、単に捨てたと伝えるだけでは、なかなか警察は納得しないでしょう」
削除したとしても、所持を疑われる可能性が残るのであれば、不安な日々を過ごすことになりかねない。捨てたことを証明する仕組みやルールが導入される可能性はあるのだろうか。
「これからそういった仕組みを作るのかどうか、今の時点ではよくわかりません。警察で受け付けてほしいところです。
国会では、削除のやり方をめぐる議論も行われていましたが、甘かったと言わざるをえません。結局は、法律の文面がそのまま警察の現場に降りていって、従来の手法で捜査することになるのではないでしょうか」
奥村弁護士はこう警鐘をならす。今回は議員立法という形で成立したが、今後は、警察がどのような運用をするのか注目される。