台風に伴う大雨の影響で、東海道・山陽新幹線のダイヤが大幅に乱れた。報道によると、お盆休みの明けた8月17日に入っても、始発から大幅な遅れが生じて、新大阪駅は大混雑だったという。
ツイッターを覗いてみると、車内や駅構内で足止めをくらったという声がある。イライラしていたり、オンラインで仕事を余儀なくされている人もいるようだ。
今回のような大雨によるダイヤ乱れによって、旅行や仕事の予定が狂った場合、鉄道会社に損害賠償を求めることはできるのだろうか。甲本晃啓弁護士に聞いた。
●鉄道会社に賠償を求めることはできない
ーー鉄道会社に賠償を求めることはできますか?
結論から言うと、鉄道会社に賠償を求めることはできません。
法律上、鉄道会社は、旅客が運送のために受けた損害を賠償する責任を負っていますが、鉄道会社に過失がない場合などは、この賠償が制限されています。天候による遅延は鉄道会社に過失はないので、補償を求めることはできません。
また、切符を買った時点で「旅客運送約款」という鉄道会社が定める契約条項が適用されます。
さらに、ほとんどの鉄道会社の旅客運送約款では、その責任範囲が狭くなっています。鉄道会社の過失の有無にかかわらず、出発駅までの無賃送還や払戻し以外には、対応を求めることができないとされているのです。
JR東海の場合は、同社の旅客運送約款282条から290条の3にそのような内容が定められています。
ーーどうして、そのようになっているのでしょうか?
一見不合理にも思えますが、鉄道会社が個別に補償していたら、おそらく今の料金制度は成り立たないでしょう。
安い料金で、誰にとっても公平に利用できる大量輸送機関として、その公共性を維持していくうえで、旅客運送約款で賠償を制限することも、法的には問題ないと考えられています。
今回のダイヤの乱れは、輸送需要が特に多いお盆期間に重なったため、計画運休をした翌々日まで続きました。その間、身近な移動手段としての使命を果たすべく終夜運転に近いかたちで尽力された鉄道会社やその職員の方々には頭の下がる思いです。
最近では、列車の位置情報から、遅れの見込みや、駅での出発順序に至るまで、さまざまな情報が公式ホームページで得られます。これらを上手に利用して、少しでも混雑やストレスを避けられるとよいですね。