24時間365日稼働している交番では、交代制で勤務している警察官以外にも「交番相談員」という職員がいることを知っていますか。
交番相談員は、警察業務に関する知識や技能を持つ元警察官などから選ばれ、都道府県単位で任命されています。
全国の交番で交番相談員が配置されているのはなぜなのでしょうか。また警察官との違いは何でしょうか。
●空き交番対策として導入
警察白書によると、全国には6250の交番があります(2022年4月1日時点)。交番には管轄警察署の地域課に所属する警察官が配置され、交代制で勤務することで24時間体制の維持に努めています。
もっとも、人員には限りがあることに加え、警察官はパトロール(警ら)や巡回連絡、交通取り締まりなど交番外で活動することもあり、一時的に誰もいない状態となる「空き交番」が生じることがあります。
事故事件が発生した際の連絡や身近な相談をしたいと近くの交番を訪ねて誰もいないとなると困りますし、空き交番の時間帯が増えると、地域住民としてもいざという時に「どうせお巡りさんいないし…」などと頼りにくくなります。
そこで空き交番対策として導入されたのが「交番相談員」制度です。
●職質や捜査はできず、拳銃も持っていない
交番相談員の任命や活動内容は、国家公安委員会の「地域警察運営規則」で定められているほか、都道府県警察で具体的な運用方法などの細部を決めていることもあります。
主な活動内容は、住民の困りごとや意見・要望などを聴いて助言するほか、遺失届や拾得届の受理、地理案内等です。事件や事故が発生した際には警察官の活動を支援することもあり、罪種を限定して被害届の代書・預かりを実施している組織もあります。
元警察官なので現役と遜色なく交番での応接をこなすことも可能ですが、非常勤職員であるため、職務質問や犯罪捜査などをできませんし、拳銃も所持していません。
全国で約6300人の交番相談員が配置されており(2022年4月1日時点)、主に来訪者の多い都市部の交番に配置されています。
交番相談員の制服は、一見警察官と似たような格好ですが、左胸に桜の花びらをあしらった標章があり、都道府県によっては右袖にもエンブレムがあるなど明確な違いがあります。一定の条件を満たした「私服」での勤務が認められているところもあるようです。
●過去には襲撃された事例も…お手軽な仕事ではない
交番相談員は決して「退官後の簡単なお仕事」ではありません。刃物をもって交番を襲撃する事件が発生した際、交番相談員が襲われるケースも少なくありません。
2020年4月には、警視庁亀有署内の交番で、交番相談員の男性が包丁で襲われ全治1カ月の重傷を負いました。2021年2月には埼玉県警朝霞署内の交番で、同年4月には千葉県警印西署内の交番で、それぞれ交番相談員が刃物で襲われています。
拳銃を持っておらず、現役警察官に比べると一般的に体力が劣る交番相談員は、自衛の手段が限られています。交番で勤務するということは、身体を張って地域の安全に貢献していることにほかなりません。