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常磐線の不当運賃訴訟「不便さ、50年変わらず」原告が最後の訴え 9月15日判決
判決に向けて話す原告の松永さん(左)と代理人の中村弁護士(2023年5月31日、弁護士ドットコム撮影)

常磐線の不当運賃訴訟「不便さ、50年変わらず」原告が最後の訴え 9月15日判決

東京メトロ千代田線に乗り入れるJR常磐線各駅停車の亀有・金町駅を使う住民が「不当な運賃を取られている」として、両社と国を相手取り、損害賠償を求めた訴訟が5月31日、東京地裁で結審した。判決は9月15日午後1時10分に言い渡される。

この日は、原告の本人尋問が行われ、松永貞一さんが時折、被告側の弁護士らを見つめながら実情を訴えた。

「大学生のころ、上野まで直通18分だったのが、乗り換えが必要になって乗車時間は24、25分に。さらに運賃も高くなりました。10年以上、毎日少しずつ損しています。こんなことは許せません」

運賃は2023年3月の値上げ前の金額

●急きょ採用となった本人尋問

本人尋問について当初、桃崎剛裁判長は被告側から反対尋問がないとの理由で却下しようとしていた。しかし、原告側の中村忠史弁護士の「提訴の背景について生の声を聞いてほしい」との主張を受け、10分程度の範囲で採用した。

松永さんが証言席に立つのは、今年1月の第1回口頭弁論の意見陳述以来。「亀有・金町の鉄道問題を考える会」代表世話人として、毎朝亀有駅に立って沿線住民に訴えてきた思いを述べた。

今年3月の運賃値上げの根拠となったバリアフリー料金制度にも言及。国が駅などのホームドアやエレベーターの設置費用を運賃に上乗せして利用者に負担させる国の制度で、首都圏の主要路線で一律10円上がった。

この訴訟でも、JRだけで亀有から上野に行くためには、北千住駅で常磐線快速線への乗り換えが強いられる点に触れている。同駅はバリアフリールートが難解で、地下2階から地上2階へは、いったん改札を出るなどする必要がある。運賃は路線ごとのため、常磐線・千代田線・山手線で30円の値上げだ。

「車いすなどは5分ではとても行けず、負担が大きいです。実地を見てほしい。僕は医者ですが、実際に患者を見ないで診断はできない。そんなの絶対にダメです。ドイツやスイスの友達もいるが、むちゃくちゃだと言っている」(松永さん)

●JR側と裁判官も質問

「だらだらやってもらっては困る」と尋問に反対していたJR側の向井千杉弁護士も2つ質問した。

ーー相互乗り入れから50年もたってから提訴したのはなぜですか?

「現役時代は慈恵医大に勤める医師として、職場には迷惑をかけられないという思いがありました。大学を引退してからも、どう訴えていけばいいか分からなかった」

ーーこれまで乗り換えせざるを得ないことを「当たり前だ」と感じていたのではないですか?イエスかノーかで答えてください。

「違います」

板場敦子裁判官も最後に、北千住の乗り換えの不便さについて、50年間ずっと変わっていないということかと質問し、松永さんは「基本的には変わっていません」と答えた。

原告側は証拠として、北千住乗り換えの動画などのほか、鉄道工学の権威である曽根悟・東大名誉教授の意見書を5月に提出した。原告らJR東、メトロ、国に対し、運賃の差額2万6980円を請求、3者はいずれも請求棄却を求めている。

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