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食糧危機が迫る中「種子法廃止で海外依存が進む」 農家たちの違憲訴訟、3月判決
市民への報告集会で話す弁護団(2022年10月7日、衆院第一議員会館、弁護士ドットコムニュース撮影)

食糧危機が迫る中「種子法廃止で海外依存が進む」 農家たちの違憲訴訟、3月判決

主要農作物種子法(種子法)が廃止されたのは、安全・安心な食料を得る権利や生産する権利の侵害で憲法違反だとして、全国の農家ら1533人が国を相手取って、違憲無効の確認などを求めた訴訟が10月7日、結審した。

この日は、約100席の傍聴席を求めて雨の中、1.5倍の人数が列をつくった。判決は来年3月24日に言い渡される。

●民間参入促進が狙い 農家からは懸念や反発

種子法はコメ、麦、大豆が対象で、各都道府県の管理下にある農業試験場などで安定的に種を育て、研究・開発する根拠となっていた。2018年4月、政府は、民間の力を生かそうという規制改革の狙いで、同法を廃止した。

しかし、各自治体から財政措置がなされないことへの懸念や、専門家や農業者からは十分な国会審議を経なかったことに反発が続出。野党からも復活法案が出される事態となった。31道県で、種子法に代わる条例が制定されているという。

原告側は、憲法に食料の権利を明示したものはないものの、生命や健康、文化を維持する上で必要不可欠なものとして、生存権・幸福追求権に包含されていると主張している。また、農業者が安定的に営農するためにも、営業の自由や財産権としても保障されるべきとする。

●「国民の生命は裁判所に委ねられている」

2019年5月の第1次提訴から3年超。これまで採種農家や学者、種を育てる農業試験場元職員らの尋問が行われた。

原告側は、彼らの証言などから種子法廃止の影響として、栃木県で国の財政手当が減少し種の価格が高騰していると訴えたが、国側は原種価格の算定方法を変えたからだなどと反論している。

提訴以降、ウクライナ侵攻や円安などで、食糧危機が市民にとってより身近になっている。

10月7日に意見陳述した代理人弁護士4人のうちの1人、岩月浩二氏は人口1億超の国の中で、日本の穀物自給率が28%と著しく低いと説明。「種子事業を民間に委ねれば、より効率的な海外に依存するようになるのは必然」と述べた。

種子法廃止は農政の根本に関わることであり、食料・農業・農村基本法の理念に照らした検討が不可欠なのに、審議会を回避して上程されたことを問題視。「専門家の知見も、国会もないがしろにされた現在、国民の生命は裁判所に委ねられている」と判断を求めた。

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