人気ラーメン店、食べ残し防止で「大盛注文したら1万円預かる」ルールが話題に…法的に問題ない?
「ラーメン工藤」で注文した野菜増しの並盛ラーメン(読者提供)

人気ラーメン店、食べ残し防止で「大盛注文したら1万円預かる」ルールが話題に…法的に問題ない?

大阪府吹田市内にある人気ラーメン店「ラーメン工藤」が4月12日、「大ラーメンを注文するお客様には¥10,000お預かりします。完食後返金します」とSNSで宣言し話題となった。

店主は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、食べられる量で注文してもらいたいとして「お残し禁止」のルールを設けていると説明(大盛残したら1万円没収、人気ラーメン店主の思い「覚悟を持って食べてほしい」)

ルールを守らず注文したラーメンを残して走り去った客がいたことを契機に、注文時に「1万円預かる」というルールを設けたと話した。

取材時点では実際に1万円を預かったケースは発生していなかったようだが、いざ1万円を預けて残してしまった場合は、「お残し禁止」ルール違反として、1万円を返さないつもりだとも語っていた。なお、ラーメンは並盛・大盛問わず1杯880円で提供しているという。

あらかじめ一定額を店側に預けるルールを採用している店舗はまれだろう。もっとも、食べ放題で提供している飲食店で、食べ残した場合に「追加料金」「罰金」の名目でさらなる支払いを求めるケースもある。

注文の際にあらかじめお金を預けるにせよ、飲食終了後に追加料金を請求するにせよ、どちらも注文物の代金以外にも金銭を請求していることになる。このような請求は法的に問題ないのだろうか。上田孝治弁護士に聞いた。

●食べ残しによる具体的な損害は「通常考えにくい」

——「注文時に一定額を預ける」「食べ残した場合追加料金をもらう」など、注文物の代金以外の金銭を請求することは法的に問題ないのでしょうか。

飲食店で食事を注文してその提供を受けるという契約をする場合、通常は「食べ残しをしない」という前提での契約にはなっていませんので、飲食代金は支払わなければいけませんが、食べ残すこと自体は何も問題はありません。

これに対して、食事の提供を受ける契約にあたって、「食べ残しをしない」という特別の約束をした上で注文したのであれば、契約上、食べ残しをしてはいけない義務が注文者に発生します。

注文者がこのような義務を負っているにもかかわらず、正当な理由もなく食べ残しをしたのであれば、注文者の債務不履行(契約違反)となり、飲食店側は注文者に対して、損害賠償請求ができることになります。

とはいえ、注文者が完食しようが食べ残そうが、飲食店側は同じように飲食代金を受け取れますし、飲食店側の負担に大きな違いもありませんので、食事が食べ残されたことによって飲食店側に発生する具体的な損害というのは通常考えにくいといえます。

●ラーメン店での1万円、「全額」有効の可能性は低い

——ラーメン屋のケースでは預ける額が「1万円」とのことですが、ルールに違反し、預かった額を店側がそのまま返さないというのは実際に認められるのでしょうか。

民法では、契約の際に、債務不履行(契約違反)があった場合の損害賠償額をあらかじめ当事者間で決めておく(「損害賠償額の予定」といいます)ことができるとされています。

損害賠償額の予定があった場合は、実際に生じた損害の有無や損害の額にかかわらず、原則として、あらかじめ決めていた額を請求できることになります。

今回のラーメン店のケースにおける「1万円」というのも、この「損害賠償額の予定」として位置づけられると思います。

ただし、この「損害賠償額の予定」は絶対のものではありません。実際の損害額に比べて、あまりにも高額な金額が決められているような場合などは、予定された額の全部または一部が無効となって効力が認められないケースもあります。

——今回の1万円は、「損害賠償額の予定」として全額有効なのでしょうか。

今回の食べ残しの場合に1万円を返さないというラーメン店の対応は、一応、「損害賠償額の予定」に基づくものとは言えます。

ただし、前述のとおり、食べ残しによる飲食店側の具体的な損害が通常考えにくいことや、ラーメン自体の代金が880円であることと比べて10倍以上の「損害賠償額の予定」となっていることからすると、いくらからアウトになるかについてはっきりとは言えませんが、少なくとも1万円全額について「損害賠償額の予定」の効力が認められる可能性は低いと思います。

●食べ放題店の追加料金は有効と認められやすい

——食べ放題の店で目に余るような量を食べ残した場合に追加料金が発生するケースもあります。こちらはどうでしょうか。

そもそも、食べ放題の店は、店舗内における制限時間内で食べられる範囲での飲食を認めているのであって、店舗内に置いてある飲食物がすべて客の物になるという意味ではありません。

したがって、その範囲を超えた目に余る食べ残しがあった場合は、客側の債務不履行(契約違反)となります。

しかも、通常の飲食店で食事の注文をする場合とは異なり、店側に、食べ残しによる具体的な損害(他の客のために、料理を新たに作って補充しなければならないなど)が発生しますので、損害賠償額の予定としての「追加料金」の効力も比較的認められやすくなります。

——「食べられる分だけを注文してほしい」「注文した飲食物はできればすべて食べてほしい」という飲食店側の考え自体は自然のものかと思われます。これを実現するために飲食店側が可能な手段として、どのような方法が考えられますか。

今回のラーメン店のケースでいえば、たとえば、ラーメンの代金自体を1万880円に設定するということであれば、注文者が完食しようが食べ残そうがその代金を支払うということになりますので、債務不履行(契約違反)の問題にはならず、「損害賠償額の予定」の問題にもなりません。

実際の損害と比べて高額すぎるがゆえに効力が認められないということも考えなくてよくなりますが、元々意図していた「食べ残し防止」という意味は乏しくなります。

なお、ラーメンの代金自体を1万880円に設定した上で、完食した人だけに代金のうち1万円を返金するという仕組みであれば、実質的にはラーメンの代金が880円で、食べ残しの場合に1万円の「損害賠償額の予定」をするのと同じになります。

プロフィール

上田 孝治
上田 孝治(うえだ こうじ)弁護士 神戸さきがけ法律事務所
消費者問題、金融商品取引被害、インターネット関連法務、事業主の立場に立った労働紛争の予防・解決、遺言・相続問題、不動産・マンション管理法務に特に力を入れており、全国で、消費者問題、中小企業法務などの講演、セミナー等を多数行っている。

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