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M-1王者も祝福!「錦鯉」国の初認証に「僕らも観賞用、国から認められたい」
漫才コンビの「錦鯉」(事務所提供)

M-1王者も祝福!「錦鯉」国の初認証に「僕らも観賞用、国から認められたい」

漫才日本一を決める「M-1グランプリ2021」で昨年、最年長王者となった「錦鯉」のコンビ名の由来を調べていると、気になる情報を見つけた。

これまで公式な規格がなかった観賞魚「錦鯉」が初めて日本農林規格(JAS)として認証されたという。

しかも、JAS法の改正以来、初めてとなる「用語」での登録となり、日本の錦鯉を海外で勝てるブランドに成長させる戦略の一環のようだ。

あれよあれよとスターダムの階段を駆け上がる「錦鯉」の長谷川雅紀さん(50)と渡辺隆さん(43)にも、今回の決定について話を聞いた。(編集部・塚田賢慎)

●「錦鯉」とは何か…が決まった

「錦鯉」のJAS(用語)認証は、全日本錦鯉振興会からの申し出を受け、昨年12月の日本農林規格調査会の審議を経て、今年2月24日に認証された。

これをもって、錦鯉とは「観賞用として外観上の特性を有した鯉(Cyprinus carpio)の総称」であると定められた。

また、錦鯉の21品種も、地肌の色や模様等によって、明文化された。たとえば、「紅白」「昭和三色」とともに御三家の一角とされる「大正三色」であれば「白地であって、緋斑及び黒の斑紋があるもの」。

左から「紅白」「大正三色」「昭和三色」(月刊錦鯉 提供) 左から「紅白」「大正三色」「昭和三色」(月刊錦鯉 提供)

これまで、JASといえば「モノ」の品質に限定されていたが、2017年の日本農林規格等に関する法律(JAS法)改正によって、モノの「生産方法」や「試験方法」などにも拡大した。

法改正の狙いは、取引の円滑化をはかり、輸出力・国際競争力を高めることにある。

●勝手に日本産と偽装されて中国で流通する錦鯉

日本の錦鯉の輸出量は、海外での需要増を受けて、年々増加傾向にあるという。2011年に約25億円だった輸出額は2020年には約48億円までほぼ倍増。その反面、品種の統一規格がないため、海外の愛好家が求める品種を選ぶことが難しいという事情があった。

審議会の議事録などによれば、日本よりもはるかに多い生産量を誇る中国など海外で、現地産の錦鯉を「日本産」として生産証明を偽造し、さらに日本の有名な生産者などの名前を勝手につけて販売するというケースも生じているとの指摘もなされた。

全日本錦鯉振興会の事務局長・瀬沼務さんに話を聞いた。

「海外の錦鯉生産技術は日本にはまだ追いついていません。しかし、あと数年もすれば、技術も上がって脅威となるのは間違いありません。その前に、日本の錦鯉のブランド化を進め、海外との競争に勝つことが目的でした」

高度経済成長期によく飼われていた錦鯉の国内市場は縮小し、今では生産した7〜8割は海外向けだという。

「高齢になったり、亡くなったりして、池を潰して住宅や駐車場にするもので、なかなか国内で飼う人がいなくなったもので」

全国には多くの生産者があって、それぞれ得意とする錦鯉の品種がある。

「たとえば、中国では紅白がめでたいので、赤白のものが売れます。ヨーロッパでは黄金、光りものに人気があります。生産者はライバル関係でもありますが、需要がうまく分散しているので、そこまで競合せずに商売できています」

●2億円で落札…加熱する海外の愛好家たち

海外の人気がどれほどのものかを知る有名なエピソードがある。

2018年に広島県の生産者が実施したオークションでは、前年に「全日本総合錦鯉品評会」で王者(日本一の錦鯉)となった錦鯉に、なんと2億300万円の史上最高額がつけられた。

落札したのは台湾の業者だったという。

オークションで2億300万円で競り落とされた錦鯉「Sレジェンド」(オークションの様子を伝える月刊錦鯉の記事) オークションで2億300万円で競り落とされた錦鯉「Sレジェンド」(オークションの様子を伝える月刊錦鯉の記事)

「錦鯉」認証の背景について、農水省の新事業・食品産業部食品製造課基準認証室は、「初めてJASの用語の規格ができましたので、他の品目の業界施設団体からの申し出や提案が想定されやすくなると思います」と他業界への影響にも言及する。

用語の規格をベースとして、鑑定方法の規格や審査員の資格といったもののJAS認証も視野に入れた。

●M-1優勝の錦鯉が語る『錦鯉』

今回の決定を受けて、お笑いコンビ「錦鯉」が弁護士ドットコムニュースの取材に答えてくれた。(取材はオンライン。以下一問一答)

錦鯉の長谷川雅紀さん(左)と渡辺隆さん(オンライン取材) 錦鯉の長谷川雅紀さん(左)と渡辺隆さん(オンライン取材)

——そもそもお2人のコンビ名が「錦鯉」になった由来は?

渡辺隆さん:2人で組んでライブに出ることになって、でもそのときはまだコンビ名が決まっていなくて、主催者の方からコンビ名を催促されたときに、たまたま外国人の方が錦鯉を爆買いしているニュースを見ていたので、申し訳ないんですけど、なんの思い入れもなく、後で変えればいいやくらいの気持ちで名付けました。

あとこれは後付けの理由ですが、雅紀さんの胸毛に白髪がまじってきて、錦鯉に見えたというのもあります(笑)。完全に後付けです。

——そんな「錦鯉」ですが、国からJASとして定められました。「観賞用として外観上の特性を有した鯉の総称」です

渡辺さん:定められたんですね。定められたのであれば、とても良かったと思います。ただ、雅紀さんはちょっと怒っているみたいですよ。

長谷川雅紀:錦鯉なんてずっと前からあるのに、定義されるのがちょっと遅いです! 僕たちだってお笑いのお仕事をしていて、『観賞用』ですから、僕らもぜひJASで定めてください。

渡辺さん:もう一つの「錦鯉」として国に認められるまで頑張ります。

●「まさのり」という錦鯉が泳いでいる

——これまで「錦鯉」に関連した仕事ってありましたか?

渡辺さん:新潟のテレビ番組で、小千谷市の「錦鯉の里」にハリウッドザコシショウと一緒に行きまして、その時に錦鯉を1匹いただきました。「まさのり」という名前を付けて、今も飼ってもらっているところです。まだ1回しか触れ合ったことがありません。錦鯉関係のお仕事をいただいたのはそれが初めてでした。

——振興会のかたに聞くところによれば、そのような「オーナー制度」を利用する海外の愛好家も多いようです

長谷川さん:錦鯉の里に行ったのは、まだM-1で優勝する前。去年の秋でした。名札と写真も付けてもらいました。それと、僕は個人で『相席食堂』のお仕事で、鯉の養殖場に行かせてもらいました。あの2億円する鯉を育てたところです。そこで錦鯉のエサを食べました。正直おいしくなかったです(笑)。ハチミツが入っていて、よい栄養だと思いましたけど。

渡辺さん:慣れたらいけるよ。今後も錦鯉関係のお仕事は、ぜひぜひやらせていただきたいです。

錦鯉の2人(事務所提供) 錦鯉の2人(事務所提供)

●JAS認証による輸出額増への期待が寄せられている

国は農林水産物・食品の輸出拡大を目指す中、2025年までに2兆円、2030年に5兆円の輸出額を目標としている。錦鯉単体での輸出目標額は設定していないものの、JAS認証による輸出額増への期待が寄せられている。

【錦鯉プロフィール】 錦鯉(にしきごい) ボケの長谷川雅紀(50歳)とツッコミの渡辺隆(43歳)による漫才コンビ。2012年コンビ結成。『M-1グランプリ2021』優勝。初著書『くすぶり中年の逆襲』(新潮社)、初DVDとなる錦鯉 独演会「こんにちわ」(コンテンツリーグ)が発売中。

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