「みんなが思ってる以上の熱量でずっとコロッケを待ってる女」。投稿者の過去のツイートを集めた画像とともにつぶやかれた内容が、3万1000件以上リツイートされるなどツイッターで話題となっています。
みんなが思ってる以上の熱量でずっとコロッケを待ってる女 pic.twitter.com/QnDWggehDM
— 林野 (@hayasino) July 26, 2021
女性は2013年9月に「7年半待ちのコロッケ注文した」とツイート。その後1~2年の間隔でコロッケのことをつぶやいており、その間には複数回の転居や結婚という大きな人生のイベントもあったようです。
しかし、注文からおよそ7年半以上経過した2021年5月には「本来届いているはずの私のコロッケはジャガイモの不作によって発送が遅れててまだ届いていない」と投稿。想い続けているコロッケをいまだ食べられていないことが、冒頭のツイートにつながったようです。
●幻のコロッケは「作れば作るほど赤字」
ツイートした女性が一日千秋の思いで待っているコロッケとは、神戸牛を専門にあつかう名産神戸肉旭屋の「神戸ビーフコロッケ『極み』」(極みコロッケ)です。
極みコロッケは、最高級の神戸牛である「A5等級の3歳雌牛のみ」の肉と、牛ふんとオガクズを肥料にして兵庫県の契約農家が栽培したジャガイモを使っており、2021年7月時点では「5個入り2700円(税込)」でネット注文限定で販売しています。
同社の担当者によると、「多くの人に神戸牛を買い求めやすい価格で食べてもらい、その味を知ってほしい」と、ネット販売がまだ目新しかった1999年から販売を開始。当初は1週間に200個を製造するペースでしたが、ネット販売の利用者増加や口コミなどで、徐々に人気となっていきました。
その後、製造数を1日200個に増やしましたが、注文の多さには追いついていない状況で、2021年7月の時点ではなんと「約21年待ち」となっています。
「よく『製造数をもっと増やせないのか』と言われますが、このコロッケは作れば作るほど赤字なんです。神戸牛を『食べてもらいたい』『知ってほしい』という当初のコンセプトで続けていますが、『1個で100円以上会社が損する』商品です。これ以上の赤字を増やすのは厳しいというのが現状です」(担当者)
「約21年待ち」という状況ですが、今はまだ予約可能です。どこまで予約を取り続けるのかはまだ決めていないそうです。
「13~14年待ちになった2016年に『これ以上はお待たせできない』として一度予約の受け付けを止めましたが、『いくら待っても構わないので販売を再開してほしい』という声に押され、2019年8月に再び予約注文を受けるようになったという経緯があります。
いつまで予約を受け付けるのかについては、社内でも『どうしようか』という意見がありますが、今現在はまだ予約ストップをしておりません」(担当者)
●21年前の注文忘れてても「キャンセル料いただきません」
しかし、数年単位でコロッケが届くのを待つとなると、「注文したことを忘れてた」「注文した子どもはすでに家を出た」といったこともあり得そうです。注文をめぐるトラブルなどは発生しないのでしょうか。
「コロッケを発送する約1週間前に、必ずメール・電話でお客様にご連絡させていただいています。注文したことを忘れていたお客様や注文したことを知らないご家族に『新手の詐欺か?』と疑われることもあります(笑)。
確認がとれないうちには発送しませんが、連絡がとれない状況が続くと注文がキャンセルされる場合もあるので、連絡先やお届け先の変更があった際にはご連絡いただければと思います。
以前は連絡がとれないことも少なからずあったのですが、注文の際に必ず携帯電話の番号を記入してもらうようにしてからは、そういったケースもかなり減りました」(担当者)
長く待つ間に、「気が変わった」「お肉を食べないようになった」など、注文側の心変わりもあり得そうです。
「当然そういうこともあるかと思います。ですので、確認の連絡があったときにその場でキャンセルしてもらって構いませんし、キャンセル料も発生しません。発送前であれば、キャンセル分は長く待っていただいている次のお客様に回るので、特に困ることもありません」
売買契約などにおけるキャンセル料は、法的には、契約を一方的に破棄するなどして債務を履行しない場合における損害賠償の請求額とされています(民法415条)。
契約内容が確定していれば、予約段階でも基本的には契約成立です。契約している以上、自己都合などでキャンセルすれば、契約書や約款などに定めがなくても、キャンセル料は発生し得ます。
「注文したいけど、忘れた頃にキャンセルしづらかったら嫌だな」と悩んでいる人もいるかもしれませんが、極みコロッケの注文については大丈夫なようです。
「注文数>製造数」の状況が続いているため、手元に届くまで待たなければならない期間は増える一方のようです。今後予約が続いて、仮に「40~50年待ち」ともなれば、生きているうちに食べられるかどうかという話にもなります。
「約21年待ち」の今でも、まだ注文チャンスなのかもしれません。