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施術中に眠っていたらわいせつ行為をしてきた美容師…慰謝料はいくら?
画像はイメージです(yongshan / PIXTA)

施術中に眠っていたらわいせつ行為をしてきた美容師…慰謝料はいくら?

美容師にわいせつ行為をされた——。妻が被害にあったという男性から、弁護士ドットコムに相談がありました。

男性の妻は、美容院でカットをしてもらっている最中にウトウトしていました。その間、担当していた美容師から、15分ほど胸を触られるなどのわいせつ行為をされました。

美容師は胸を触ったり揉んだりしたことを認めており、謝罪をしています。男性は示談を考えていますが、この場合の慰謝料はいくらが相場になるのでしょうか。高橋麻理弁護士に聞きました。

●示談に至るまでの流れは?

示談をするにあたってポイントとなることを3つお話しします。1つ目は「加害者の謝罪の気持ち」です。

示談をするには、前提として、加害者が、自分のしたことについて、謝罪したいという気持ちを示していることが必要です。今回のケースでは、加害者が、相談者の妻にわいせつ行為をしたことを認め、謝罪しているとのことですから、示談に向けて話し合いができる状況は整っているといえるでしょう。

2つ目は「刑事処罰を求める気持ちがあるか」です。

今回のケースでは、加害者の行為は、準強制わいせつ罪に該当する可能性があります。

相談者の妻は、加害者の刑事処罰に関してどのようなお気持ちでしょうか。もし、相談者の妻が「しっかり捜査して、厳しく処罰してほしい」とお考えなのであれば、まずは、警察署に被害届を提出し、警察に処罰意思を伝える必要があります。

加害者との間で示談が成立すれば、その事実は、加害者を起訴するかどうかという検察官の判断にも大きく影響し、起訴されない可能性が高くなるので、まずは相談者の妻が加害者の刑事処罰を望むのかどうかという意向を確認する必要があるでしょう。

また、示談するということになると、通常は、加害者側から、すでに提出した被害届を取り下げることや、まだ被害届を出していないケースでは、今後被害届を提出しないことを約束してほしいと求められることが多いです。

●示談書に何を盛り込むか

3つ目は「示談に向けた話し合い」です。

相談者の妻としても、加害者の謝罪の気持ちを受け入れて、示談を成立させることで解決したいとお考えの場合には、まず、示談書にどのような内容を盛り込むか、考えてみてください。

今回のケースでは、以下などが考えられるでしょう。

(1)加害者が加害行為を認め、被害者に謝罪、
(2)加害者の損害賠償義務の内容(金額、支払期限、支払方法など)、
(3)美容室に保管してある相談者の妻に関する情報(氏名、住所、電話番号など)を削除

どのような内容の約束をするかをめぐって加害者と意見が対立してしまい、示談することができない場合には、慰謝料の支払いを求めて裁判を起こすことも考えられます。

ただ、裁判になった場合、加害者が必ずしも自分のしたことをきちんと認めるか分かりません。その証明をする責任は被害者側にありますし、解決までには時間もかかります。そのようなことを考えるとやはり話し合いによる解決を目指したいという場合は、最終的に一定の譲歩が必要になるかもしれません。

その場合、加害者に約束させたい内容のうち、特に何を優先するかという優先順位を考えてみるのがいいでしょう。

●慰謝料の金額は?

過去の傾向に照らすと、今回のケースでは、30万円から100万円未満になることが考えられます。

ただ、一般的に、犯罪被害による慰謝料請求事件では、加害者が示談成立による早期解決を強く望んでいたり、加害者に資力があったりする場合には、これより高額な慰謝料額の支払に応じるというケースもあります。

今回のケースでも、加害者が業務中に犯行に及んだということですから、今後仕事を続けていくためにも刑事処罰を受けることはなんとしても避けたく、早期に解決したいという強い意向があることも考えられます。

その場合は、加害者の資力にもよりますが、加害者が、100万円を超える慰謝料の支払いに応じる可能性もあります。

慰謝料の額は個別の事情により大きく変わることがあるので、ご自身のケースではどの程度を目標に交渉すべきかということを見極めることが重要です。見極めの判断はなかなか難しいものですよね。お気軽に弁護士に相談してみてください。

プロフィール

高橋 麻理
高橋 麻理(たかはし まり)弁護士 弁護士法人Authense法律事務所
第二東京弁護士会所属。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。検察官を任官し、数多くの刑事事件の捜査・公判を担当したのち退官。弁護士登録後は、捜査や刑事弁護で培ったスキルを活かし、企業不祥事・社内不正における社内調査のアドバイスや、対象者への事情聴取などにも注力。2023年12月には弁護人を務めた刑事裁判で無罪判決を獲得。東証プライム上場企業の社外取締役(監査等委員)など、複数の企業で社外役員を務め、企業法務にも精力的に取り組んでいる。法律問題を身近なものとして分かりやすく伝えることを目指し、メディア取材に積極的に対応。子どもへの法教育にも意欲を持っている。

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