現在お使いのブラウザ(Internet Explorer)は、サポート対象外です。 ページが表示されないなど不具合が発生する場合は、 Microsoft Edgeで開くまたは推奨環境のブラウザでアクセスしてください。    
弁護士ドットコム ニュース
  1. 弁護士ドットコム
  2. 民事・その他
  3. 夫婦別姓訴訟を支える「親友コンビ」 竹下博將弁護士と野口敏彦弁護士 最高裁にかける「思い」
夫婦別姓訴訟を支える「親友コンビ」 竹下博將弁護士と野口敏彦弁護士  最高裁にかける「思い」
親友であり、ともに選択的夫婦別姓訴訟の弁護団でもある竹下博將弁護士(左)と野口敏彦弁護士(2021年1月/弁護士ドットコム撮影)

夫婦別姓訴訟を支える「親友コンビ」 竹下博將弁護士と野口敏彦弁護士 最高裁にかける「思い」

選択的夫婦別姓訴訟が佳境を迎えている。

現行の夫婦同姓制度を「合憲」と判断した「第一次夫婦別姓訴訟」の最高裁判決から5年。「第二次夫婦別姓訴訟」が再び最高裁で判断されることになった。

その訴訟を支える弁護団に名を連ねるのが、竹下博將(ひろゆき)弁護士と野口敏彦弁護士だ。実は、出身地も年齢も性格も、すべてが大きく異なる2人だが、司法修習で出会い、親友になった。

現在は同じ法律事務所で働きながら、夫婦別姓訴訟で竹下弁護士が弁護団副団長、野口弁護士が事務局長をそれぞれつとめ、絶妙のコンビネーションをみせる。

そんな2人に、第二次夫婦別姓訴訟にかける「思い」を聞いた。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)

●再生医学の研究室から司法試験

竹下弁護士は、京都生まれ。母校・京都大学では再生医学の研究室(工学部工業化学科)に所属していた。卒業後は大学院に進学したものの、すぐにやめたという。

「研究者になりたかったのですが、自分がこれほど実験に向いていない人間だとは気づいていなくて…。当たり前ですが、実験では同じことを何度も繰り返す必要があり、それが嫌になっちゃったんですね」

将来を考えたとき、思い出されたのは父が仕事をしている姿だった。日本で初めて、全盲というハンディキャップを持ちながら弁護士となった竹下義樹氏である。

「弁護士の仕事はよくわかりませんでしたが、父が楽しそうに仕事をしていることだけは知っていましたので、弁護士になろうと思いました。目指したときは、司法がこんな胡散臭い世界だとは思ってもみませんでした(笑)」

司法試験合格後、弁護士としてのスタートは地元京都ではなく、あえて東京を選んだ。有名な父を持つ息子の矜持からだ。

「関西で就職をすれば、父を知っている人たちにかわいがってもらえるだろうとは思いました。でも、自分が成長するためには、まったく知らない土地で一からやるべきだなと。それで、東京に出てきました」

●「彼女の一言」で司法試験目指す

一方の野口弁護士は長崎県生まれ。都立西高校を卒業後、早稲田大学法学部に入学した。しかし、当初は法学部を受けるつもりはなかったという。

「東大文三が第一志望でした。親父が東大文三だったし、自分も教育者や先生になろうかなとなんとなく思っていたんですよね。弁護士は、うちの実家では『黒いものを白と言う職業だ』と嫌われていましたから(笑)」

しかし、センター試験の夜、当時付き合っていた年上の彼女に「将来が見えない」と進路を相談したところ、「あんたは生意気なんだから、日本で一番難しい試験を受けてみなさいよ」と言われた。

「カチンときて、『じゃあやりますよ』といって、法学部に入学しました。1年目から、『司法試験を受けよう。絶対に見返してやるんだ!』と意気込んでいましたね」

猛勉強の末、卒業した年に受けた司法試験で合格した。

「3回目の試験でしたが、もうズタボロで、安請け合いするんじゃなかったなと思いました。その彼女が今の奥さんです。事実婚ですけど。彼女の一言がなかったら、弁護士には間違いなくなってなかったと思います」

●第一印象は「この人すげぇな」

まったく違うタイプの2人が出会ったのは、司法修習だった。

「僕からすると、第一印象で『この人すげぇな』と思いました」と、竹下弁護士について語る野口弁護士。

「うちの奥さんと同じような感じで、ちょっと日本人離れしているというか…。クラスで、いろいろな発表をさせられるのですが、日本人ってあまり率先して『自分がやる』とは言わないじゃないですか。

でも、75人いるクラスの中で、竹下がいきなり、『はい、じゃあ来週は野口くんね』みたいにリーダーシップを取り始めたんです。それが、すごい合理的でテキパキしていて、本当にすごいと思いました」

ちなみに、竹下弁護士はこの出会いをどう思ったのか。

「いま、野口が話したことは何一つ覚えてないです。当たり前のことを当たり前にしているだけなので、特に記憶には残ってないです」と涼しい顔で一蹴した。

野口弁護士は気にすることなく、言葉を重ねる。

「映画監督の想田和弘さんご夫妻を原告とする夫婦別姓確認訴訟もそうですが、人の行かない道を、率先して自分から進んでいこうとする人は少ないと思います。周囲に忖度したり、遠慮したり。でも、理系だからか、『そこに道があるなら、行けばいいじゃないか』というのが竹下ですね。

竹下が道を切り拓いてくれる。この人と一緒に仕事をしたらすごいことができるなって思ったし、今でもそう思っています」

竹下博將弁護士(左)と野口敏彦弁護士(2021年1月/弁護士ドットコム撮影) 竹下博將弁護士(左)と野口敏彦弁護士(2021年1月/弁護士ドットコム撮影)

●きっかけは恋愛相談

そんな2人が仲良くなったきっかけは、意外にも恋愛相談だった。野口弁護士は当時、例の年上の彼女とどう付き合っていくか、ますます人生に悩んでいた。

「最初に、その悩みを打ち明けることができたのが、竹下でした。たぶん、竹下は『なんだこいつは』って思ったと思います」

竹下弁護士に聞いたところ、野口弁護士の恋愛相談のことは記憶にあった。

「たまたま、二人とも同期・同クラスだし、借りていた部屋も近かったので、いろいろ話す機会がありましたよね」。さらりと話す竹下弁護士だが、それ以来、二人は親友となった。

弁護士になってからは、別の法律事務所に勤め始めたが、竹下弁護士の誘いもあって、現在の事務所に野口弁護士が移った。辛口気味の竹下弁護士だが、野口弁護士には信頼を寄せる。

「信頼できて、かつ能力もある。もちろん、いろいろと話もできるということで、声をかけました」

しかし、親友とはいえ、同期で同じ事務所で働く中、意見の対立やケンカはないのだろうか。野口弁護士は即座に否定する。

「ケンカはないですね。対立もないかな。人間のタイプが全然違うし、僕は竹下が言っていることは非常に理解ができるし、竹下も話をしっかり聞いてくれて、考えてくれます。

夫婦もそうだと思いますが、そうやって遠慮なく話ができていれば、永久に会話でピンポンしていられるんじゃないですかね」

●司法が「胡散臭い世界」である理由

竹下弁護士と野口弁護士が今、心血を注いでいるのが、第二次夫婦別姓訴訟だ。弁護団の中核として活躍している。

竹下弁護士は、第一次夫婦別姓訴訟から弁護団に参加した。きっかけは「スカウト」だった。

「第二東京弁護士会の『両性の平等に関する委員会』に所属していたところ、今は参院議員になっている打越さくら弁護士だったかな、『どう?』と誘われたのがきっかけでした」

そう振り返る竹下弁護士。

「先ほど、司法は胡散臭い世界だと言った理由の一つには、抽象的には良いことを言っているけれど、具体的には実行されていないことがあると思ったからです。

その最たるものの一つが、男女平等の問題です。その矛盾に興味を持って、『両性の平等に関する委員会』に入りました。私は論理的にものごとを組み立てていくことが好きなので、そういう面を見ていただいて、誘われたのではと思っています」

●納得のいかない2015年最高裁判決

野口弁護士が第二次夫婦別姓訴訟にかかわるようになったのは、やはり竹下弁護士が「切り拓いた道」があったから。

「第一次夫婦別姓訴訟について、友人として、竹下から「こんな訴訟やっているよ」と聞いていて、興味は持っていました。でも、最高裁で負けたときに『なぜ?』と思って、判決書や訴状、上告理由書などを読みました。

そうしたら訴状も上告理由書も、ものすごくよく書けていた。国連からも女性差別撤廃の観点から民法を改正しろという勧告を2回も受けている。これだけ条件が揃っているのに、どうしてこんな訳のわからない判決が出るんだと、まったく納得がいきませんでした」

強い関心を持っていた野口弁護士の目に偶然止まったのが、竹下弁護士が書いた「夫婦別姓訴訟が問うた問題」(「自由と正義」2016年Vol.67 No.11)という、第一次訴訟についての記事だった。

「あの記事を読んでいたら、『第二次訴訟を予定している』と書いてあったので、その後、竹下に、『実際に提起するときは、ぜひ!』とお願いしました」

なお、野口弁護士のその後を決めたこの記事について、竹下弁護士は「書いたことも忘れてました」といたってクールだった。

●2015年から5年、再び最高裁へ

2015年の最高裁判決を経て、竹下弁護士が今も夫婦別姓訴訟に注力するのは、なぜなのだろうか。

「第一次訴訟では、判決でどれだけ説得的なことが書かれるのか興味がありました。ところが、まったく説得的ではなく、およそ現場を理解していないものでした。

私の中では、司法とは説得力の世界だと思っています。裁判所が偉いからそれに従うのではなく、中身の伴った説得力こそが本来求められている。それにもかかわらず、説得的な説示がされなかったということが、弁護団に参加している理由の一つだと思います」

第二次夫婦別姓訴訟から参加した野口弁護士も、2015年から社会も確実に変わってきていると話す。

「第一次訴訟の最高裁判決は、原告や弁護団に大きなショックを与えたようでしたが、同時に夫婦別姓の選択肢を望むみなさんには、『やはり自分たちが動かなければ』という意識をもたらしたのだと思います。

たとえば、現在、各地の地方議会に働きかけをしている『選択的夫婦別姓・全国陳情アクション』の皆さんは、日本全国で動いてくださっています。世論調査やアンケート調査も増えていて、賛成・容認の比率は過半数を超え、最近では8割以上が賛成といった数字も出ています。

この世論の変化は、第二次夫婦別姓訴訟にとって、大きな追い風です」

2015年12月の最高裁判決から5年、2020年12月に最高裁は再び、大法廷で判断することを決めた。竹下弁護士はこう語る。

「5年前は、一部の人だけの問題と受け止められていましたが、今は、実はそうではなくて、みんなのことであり、身近な人のことであると受け止められるようになったと思います。最高裁での判断に期待したいです」

【竹下博將弁護士略歴】 第二次夫婦別姓訴訟弁護団副団長。1976年3月、京都府生まれ。1994年3月、洛星高等学校卒業、1998年3月、京都大学工学部工業化学科卒業。2006年10月に弁護士登録、中島・宮本法律事務所入所。主な著書に「養育費・婚姻費用の新算定表マニュアル〜具体事例と活用方法〜」(日本加除出版・執筆代表者)。養育費算定の文書化サービス( https://kajijiken.com/ )を運営

【野口敏彦弁護士略歴】 第二次夫婦別姓訴訟弁護団事務局長。1981年7月、長崎県生まれ。2000年3月、東京都立西高等学校卒業、2004年3月、早稲田大学法学部卒業。2006年10月に弁護士登録、柳田野村法律事務所(現・柳田国際法律事務所) 入所。2012年10月、国内大手証券会社法務部門出向。2015年7月、CFP資格審査試験合格。2017年2月から中島・宮本・溝口法律事務所。2017年2月、関東弁護士会連合会高齢者・障がい者に関する委員会委員(2019年4月よりホームロイヤー部会長)。

オススメ記事

編集部からのお知らせ

現在、編集部では正社員スタッフ・協力ライターと情報提供を募集しています。詳しくは下記リンクをご確認ください。

正社員スタッフ・協力ライター募集詳細 情報提供はこちら

この記事をシェアする